高齢化進む日本で増加する「無縁遺骨」 失われる家族の絆
10月19日、身寄りがなく、引き取り手のいない「無縁遺骨」が日本各地で増加している。写真は、無縁遺骨が安置されている施設を訪れ、手を合わせる横須賀市当局者。9月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
身寄りがなく、引き取り手のいない「無縁遺骨」が日本各地で増加している。遺骨の安置スペース不足を引き起こす一方で、家族の絆が薄れ、経済的圧力にさらされる日本の高齢化社会を象徴する問題となっている。
身寄りのない死者は公費で火葬されるが、その身元は判明していることが多い。だがほとんど場合、遺族は引き取りを拒否するか、連絡しても返事がない。埋葬には費用も時間もかかることから、故人をほとんど知らない親戚には負担となる。
「私が死亡した時、15万円しかありませんが、火葬・無えん仏にしてもらえませんか。私を引き取る人がいません」──。神奈川県横須賀市で2015年、70代の男性がこのような内容の遺書を残して亡くなった。男性の遺骨はその後、地元の寺に埋葬された。
引き取り手のいない遺骨は、生活保護に頼って生活する高齢者が増え、核家族化が進む日本の、社会的、経済的、そして人口構造的な変化を浮き彫りにしている。現代の日本では、伝統的な家族の絆や役目は薄らいでいる。
こうした問題は今後、さらに深刻化すると専門家は指摘する。日本の人口は減少する中で、年間の死亡者数は現在の133万人から2040年には167万人に増加すると予想されている。
横須賀市では、300年の歴史のある納骨堂を去年閉鎖。そこに収められていた遺骨は、より少ない数の骨つぼに収め直され、市内にある別の保管場所に移された。それとは別に、市役所にも約50柱の引き取り手のない遺骨も安置されている。
「納骨スペースはなくなりそうで、ひっ迫している」と、さいたま市の生活福祉課で課長補佐を務める中村仁美さんは言う。同市では近年、引き取り手のいない遺骨が増加しており、その数は計1700柱あまりに達した。
「生活保護の人が多い。もともと親族とうまくいっていない人が多く、なかなか引き取りにつながらない」と中村さんは話す。