最新記事

事件

サウジアラビア政府がツイッター従業員に反体制活動を監視させていた──報道

2018年10月26日(金)14時30分
松岡由希子

反体制派のツイッターアカウントを密か監視していた Fabrizio Bensch-REUTERS

<サウジアラビア政府が、米ツイッターの元従業員を通じて、複数の反体制派のツイッターアカウントを密かに監視していた......>

サウジアラビア政府が、米ツイッターの元従業員を通じて、複数の反体制派のツイッターアカウントを密かに探り、監視していた----。米紙ニューヨークタイムズが、2018年10月20日、その詳細を報じている。

サウジアラビア政府の意向のもと、複数のアカウントを覗き見?

サウジアラビアでは、2010年頃から広がった民主化運動「アラブの春」以降、オンライン上での情報共有や幅広い議論を活性化するプラットフォームとしてツイッターが普及してきた。

これに対して、サウジアラビア政府は、王室の上級顧問サウード・カハタニ氏を中心に、反体制派への嫌がらせや脅迫、政府に批判的な論調や情報の抑え込み、妨害をはかってきた。なお、カハタニ氏は、2018年10月、トルコ総領事館でサウジアラビア出身ジャーナリストのジャマル・カショギ氏の死亡が確認された後、解任されている。

匿名の情報筋によると、ツイッターでは、2015年末、西側の諜報機関から「同社の従業員のアリ・アルザバラ氏が、サウジアラビア政府の意向を受けて反体制派のアカウントをスパイしている」との情報がもたらされたことを受けて、社内調査を実施した。

2013年にエンジニアとしてツイッターに入社したアルザバラ氏は、電話番号やIPアドレス、インターネットと接続しているデバイスのUUID(一意の識別子)などを含め、ユーザーの個人情報やアカウント履歴にアクセスできる権限を与えられており、サウジアラビア政府の意向のもと、複数のユーザーアカウントを覗き見していたとされている。

ツイッターの社内調査では、アルザバラ氏への聞き取りのほか、どの情報にアクセスしたかを特定する科学捜査などを行ったが、アルザバラ氏がツイッターのデータをサウジアラビア政府に渡したという証拠は見つからなかった。アルザバラ氏は、2015年12月にツイッターを解雇された後、すぐにサウジアラビアに帰国し、現在、サウジアラビア政府で仕事をしている。

ツイッターは数十件のアカウントの所有者に通知

ツイッターは、2015年12月11日、アルザバラ氏が不正にアクセスした形跡のある数十件のアカウントの所有者に通知を出し、「あなたのツイッターアカウントは、政府が後押しする者から標的にされているおそれがあります」と警告した。この通知の対象者には、プライバシーやセキュリティなどを専門とする研究者や政策学者、ジャーナリストなどがいたというが、カショギ氏がこれに含まれていたかどうかは明らかになっていない。

ニューヨークタイムズの取材に対し、ツイッターはコメントを拒否しており、現在のところ、アルザバラ氏やサウジアラビア政府からの反応もない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中