最新記事

アメリカ社会

米国でミレニアル世代を中心に「魔女」が急増中、その理由とは

2018年10月10日(水)17時50分
松丸さとみ

フェミニズムと魔女

英語で魔女を指す「Witch」という言葉は、時に魔女を表すだけでなく、女性を蔑む時にも使われる。しかし逆に、自らを魔女だと名乗る人たちは、それに対抗するかのようにフェミニストであることが多い、とクオーツは指摘する。

ヨーロッパのニュース専門チャンネル、ユーロニュース(電子版)は、トランプ大統領に対する反対運動や、性暴力被害を告発する動き「#MeToo」(私も)に触発されて、魔術を始める人が米国の若い世代の女性に多い、と伝えている。

17世紀に「セイラム魔女裁判」と呼ばれる魔女狩りが行われたマサチューセッツ州セイラムは現在、「ウィッチ・シティ」(魔女の街)と呼ばれている。そこで魔女として活動しているという女性はユーロニュースのインタビューに答え、「魔女は、ドナルド・トランプのような男性が恐れる存在」だと述べ、反トランプ運動に最適なシンボルだと語っている。ユーロニュースはさらに、米国の若い世代での宗教離れが魔女人気の高まりを後押ししていると指摘する。

英国のファッション雑誌グラシア(電子版)は2016年7月の記事の中で、宗教よりもスピリチュアルなものを信じ、ハリー・ポッターを読みながら育った世代でもあるミレニアルズたちにとって、伝統や保守的な考えに対抗する1つの表現法が魔女や魔術なのだと説明している。

ファッションとしての魔女

最初に魔術や魔女に興味を持ったのは、インスタグラムなどのソーシャルメディアだった、という人も多いようだ。魔女界のインフルエンサーとも言える「Hoodwitch」は、インスタグラムのフォロワー33万人以上を誇る。

また、インスタグラムで「#witch」(魔女)のハッシュタグを探すと、640万件以上ヒットする。こうした「ファッション」の部分も若い女性に人気の秘密のようだ。

ただし、単なる流行と考えて適当に乗っかると、痛い目にある可能性がある。クオーツによると、こうした魔女のトレンドを商機と見たフランスの化粧品メーカーのセフォラが、今年10月から米国で「魔女スターター・セット」を販売しようと計画していた。香水やタロットカード、ハーブなどが9点入ったボックスセットだ。しかし魔術を宗教として実践している人たちを矮小化しているとの批判を集め、自称「魔女」たちもSNSでセフォラ商品のボイコットを呼びけるなどして炎上。同社は謝罪するとともに、同商品の製造と販売を中止すると発表するに至っている

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中