アジア各国が気付き始めた中国「一帯一路」のヤバさ パキスタンも「借金の罠」に尻込み
9月1日、中国が掲げる「現代版シルクロード」構想の中央に位置するパキスタンでは、植民地時代に造られた鉄道路線の改修プロジェクトが、長期に及ぶ遅延を強いられており、同国政府もその膨大なコストと融資条件に尻ごみしつつある。カラチで9月撮影(2018年 ロイター/Akhtar Soomro)
中国が掲げる「現代版シルクロード」構想の中央に位置するパキスタンでは、植民地時代に造られた鉄道路線の改修プロジェクトが、長期に及ぶ遅延を強いられており、同国政府もその膨大なコストと融資条件に尻ごみしつつある。
大都市カラチと北西部ペシャワルを結ぶ全長1872キロの鉄道路線(ML-1)改修プロジェクトは、当初予算が82億ドル(約9300億円)に上る、中国の「一帯一路」イニシアチブにおけるパキスタン最大のプロジェクトだ。
だが、同国のラシッド鉄道相は1日、債務負担を避けるため国内での鉄道プロジェクト予算を20億ドル削減すると発表。「パキスタンは貧しい国であり、多大な債務の負担には耐えられない。中国パキスタン経済回廊(CPEC)計画に基づく予算を82億ドルから62億ドルに減らした」と同鉄道相は述べた。
鉄道計画の遂行には自信を見せたものの、コストは62億ドルからさらに42億ドルまで減らしたい、と同相は強調した。
中国がインフラ整備資金として約600億ドルの拠出を約束していたCPEC計画について、8月に就任したパキスタンのポピュリスト政治家であるカーン首相は、中国からの投資に警戒感を示していた。
中国投資に対する熱気が冷めつつあるのを反映するかのように、スリランカやマレーシア、モルディブといった他のアジア諸国でも、前政権が締結した中国との契約に懸念を示す新政権が誕生している。
パキスタンの新政権は以前より、中国一帯一路関連の契約全般の見直しを望んでいた。政府当局者はこれらの契約について、交渉が十分ではなく、コストが高すぎるか、中国側に有利になりすぎているという懸念があると述べている。
だが、同国政府にとっての不満は、中国政府が再検討に応じる姿勢を見せているのは未着工のプロジェクトに限定されている点だ、とロイターの取材に応じたパキスタン政府高官3人は語った。
中国外務省は先月、両国とも「すでに竣工したプロジェクトが正常に運営されるよう、また建設中のプロジェクトがスムーズに進捗するよう」それぞれの一帯一路プロジェクト推進に注力している、と述べた。
パキスタンの政府当局者は、引き続き中国マネー誘致には力を入れているものの、コストと条件をより重視したいと語る。CPECについても、カーン首相の政策綱領に沿った社会発展を実現するプロジェクトを中心とするよう、方向転換を進めている、と述べた。
CPEC再調整に向けたパキスタンの情勢は、脆弱な同国経済を浮揚させるために中国融資に依存していることで複雑になっている。
また、往年の同盟国である米国との関係に亀裂が目立つ中で、パキスタン政府の交渉力も弱まっている。さらに、経常収支を巡る危機も、国際通貨基金(IMF)による救済につながる可能性が高く、歳出削減を要求されかねない。
パキスタン政府閣僚は、「われわれの側にも言いたいことはあるが、中国以外にパキスタンへの投資を進めている国はない。われわれに何ができようか」とロイターに語った。