最新記事

日本政治

マネーロンダリング対日審査、法整備不備を指摘の恐れ 国内政治家への規制なく

2018年10月4日(木)17時00分

10月4日、マネーロンダリング(資金洗浄)対策を国際的に推進する政府間会合、金融活動作業部会(FATF)の第4次対日相互審査を来年に控え、法制度が十分ではないとの懸念が、日本政府の一部や金融界で浮上している。写真は2013年2月撮影(2018年 ロイター/Shohei Miyano)

マネーロンダリング(資金洗浄)対策を国際的に推進する政府間会合、金融活動作業部会(FATF)の第4次対日相互審査を来年に控え、法制度が十分ではないとの懸念が、日本政府の一部や金融界で浮上している。FATFが国内、海外問わず政府要人の規制強化を求めているのに対し、日本は海外の要人だけを規制対象としているからだ。関係者からは、国内政治家の規制強化に向けて政府として取り組むべきとの声も出ている。

国内政治家は規制外

「このままでは、FATFから法制度の不備を指摘されるのは避けられない」――。ある経済官庁の幹部は顔を曇らせる。同幹部は、2016年に施行された改正犯罪収益移転防止法(犯収法)で、国内政治家の規制が入っていないことを懸念している。

日本は08年の第3次審査で、FATFが求める水準に到達できず、14年にはFATFが声明で、日本を名指しして対応を迫る事態に発展。日本はようやく犯収法などの改正にこぎ付け、危うく「ハイリスク・非協力国」とされる「グレー・リスト」入りを免れた経緯がある。

このとき、課題として積み残されたのが、国家元首や首相、閣僚、中央銀行総裁、軍隊の幹部など重要な公的地位を有する要人(PEPs)の扱いだ。

FATFはPEPsについて、汚職防止の観点から、取引時の本人確認を金融機関の窓口職員ではなく上級の管理者に行わせるほか、収入状況の確認、継続的な監視など、一般の利用者よりも厳しい対応が必要だとし、法制化を要請。第3次審査の時点では日本は法整備ができていなかった。

しかし、日本は法改正の議論の中で、PEPsを外国と国内に分けて規制する道を選び、改正犯収法の施行令で外国のPEPsだけを規制対象とした。

犯収法を所管する警察庁の樹下尚・組織犯罪対策部長(当時)は14年10月の衆院法務委員会で、国内PEPsについて「マネーロンダリング対策の有効性を直接把握できない外国のPEPsと、自ずから対策の必要性の程度が異なるのではないか」と述べ、国内PEPsの規制は「慎重な検討を行う必要がある」と発言した。

改正犯収法施行から2年がたち、仮想通貨の普及などマネロン対策を取り巻く環境は変化した。しかし、警察庁の担当者は「国内PEPsの扱いについて、慎重な検討が必要というスタンスは数年前と変わらない」と話す。「国内PEPsがマネロンに関与するリスクがあるのか、事実は必ずしも明確ではなく、慎重な検討が必要だ」と説明する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中