マネーロンダリング対日審査、法整備不備を指摘の恐れ 国内政治家への規制なく
第4次審査は各国が苦戦
FATFの第4次審査は、第3次審査より審査項目が多様化した。国内法の整備状況に加え、法制度が実際に機能しているかどうかについても審査される。一段と厳しくなったFATFの要求に応えられるように、金融庁は金融機関に対しても、マネロン防止体制を確立するように厳しく指導している真っ最中だ。
一方で、すでに第4次審査を受けた国々の結果は厳しい。主要国で「合格」したのはイタリア、スペイン、ポルトガルなど。米国やスイス、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど「金融先進国」とされる国でも「不合格」が相次いでいる。
PEPsの規制は、法令の遵守状況に関する40の審査項目の1つ。主要国で、この項目をクリアしたのは国内外とも規制を強化しているスペイン、豪州、イタリア、ポルトガル。米国は国内PEPsの規制が明確でないなどとしてパスできなかった。
専門家の1人は「このまま行けば、日本はPEPsの規制について落第するのは間違いない」と懸念する。
ただ、PEPs規制は審査項目の1つに過ぎず、ここで「不合格」になっても、全体の審査結果に直結するとは限らない。
「米国でさえできないのだから、『後進国』の日本ができるわけがない」と自嘲(じちょう)する金融関係者もいる。しかし、「審査の前から不備が分かっていながら、何もしないわけにはいかない。政府一丸で取り組んでいるのだから、警察庁には適切に対応してほしい」(経済官庁幹部)との声もある。
「外圧」待ち
「官僚が政治家に対する規制を提案できるわけがない」――。ある省庁の幹部は、国内PEPsの規制に踏み切れない背景を解説する。「グローバルな金融規制の動きなど国会議員が理解するわけもなく、国会が紛糾するのは必至」と話す。
ただ、金融界からは「民間も対応に努力している。官は官でやるべきことをやってほしい」(銀行役員)と、「官尊民卑」への不満も漏れる。
ある法曹関係者は「来年のFATF審査の前に、国内PEPsの規制強化に向けて政令改正に動き出すとは考えにくい」とみる。「官僚はFATFの指摘という『外圧』を待っているのだろう」と話した。
マネロン対策の取り組みは、図らずも「政官民」の関係の歪みを浮き彫りにしている。
(和田崇彦 編集:布施太郎)
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