最新記事

米中関係

トランプ政権、中国を中間選挙へ介入画策と非難 対中「圧力戦略」新局面入りか

2018年10月1日(月)13時30分


全方面で圧力強化

中国の「影響操作」と呼ばれる問題について、トランプ大統領はより多くの説明を米情報機関から受けるようになっており、この分野も含め、中国に対してさらに強い姿勢で臨む構えだと、政府高官は言う。

「通商措置を取ったこともあり、われわれは全方位で中国に一層の圧力をかける準備ができている」と同高官は語った。

中国が米国の政府や企業データベースにハッキングを仕掛けてくる主犯の1つだと、米政府は以前から特定していた。ただ、ロシアが2016年の米大統領選で行ったような、ソーシャルメディア上の意識操作を含む組織的な政治キャンペーンを中国が行った形跡は見つかっていないと米政府関係者や独立系アナリストは指摘する。

中国は、米国選挙に対する一切の介入行為を否定しており、「中傷だ」と反発している。

26日の国連発言で、トランプ氏が中国による具体的な行動として唯一指摘したのが、米新聞への「プロパガンダ広告」だった。これは、アイオワ州有力紙デモイン・レジスターの日曜版に中国国営メディア企業が掲載した、米中貿易が相互利益をもたらすと訴えた4ページの折込広告のことを指している。

米大統領選においてトランプ氏は、農業州アイオワで勝利を収めたが、貿易戦争が長引けば農家が大きなダメージを受けることになる。

ただ、外国政府が貿易促進を訴える広告を米紙に出すことは日常的にあることで、外国情報機関が秘密裏に行う工作とは異なる。

「中国政府は、われわれの政策を撤回させるためにあらゆる手段を講じている」とホワイトハウス国家安全保障会議の広報担当者は語る。「彼らは、トランプ大統領に投票した州の農家や労働者を狙って報復関税を課している。その他にも政治的、経済的、通商的、軍事的な手段やメディアを使い、中国共産党の利益を得ようとしている」

トランプ政権は、たとえ中国から激しい反応を引き起こす恐れがあっても、より幅広く押し返そうと決意しているかのように見える。

例えば、中国によるネット上の盗難行為やスパイ行為に対しても、より厳しい行動を取ることを米国政府が検討している、と関係者は語ったが、詳細な説明は避けた。

米軍は今週、南シナ海上空でB52戦略爆撃機を飛行させ、同海域の領有権を主張する中国を改めてけん制した。台湾への3億3000万ドル(約375億円)相当のF16戦闘機の部品などの売却も今週承認しており、台湾を自国の一部とみなす中国を立腹させた。

また、中国が対北朝鮮制裁を完全に履行しなくなっている可能性があるとして米政府関係者は懸念を深めており、この分野でも中国に圧力をかけ続けるとしている。

他方、米国側の「やり過ぎ」を懸念するアナリストもいる。

「衝突や影響力は、賢明に使われるならば、国際関係における便利な道具だ。 特に中国の問題行動に対してはそうだ」。昨年まで米国務省で東アジア政策担当幹部を務め、現在はアジア・ソサエティのポリシー・インスティテュートに所属するダニエル・ラッセル氏は語る。

「だが、特に中国のように巨大で強力な国に対しては、攻撃的に正面から全面攻撃を仕掛けても、成功する可能性は低い」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Matt Spetalnick and David Brunnstrom

[ワシントン 27日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中