タイ洞窟の少年たちは見捨てられる寸前だった
洞窟の随所随所に酸素タンクとロープを配置する複雑な救出計画を提案したのはアンダーソンだ。その計画に基づき、ダイバーたちの訓練が始まった。最終的に、さまざまな国籍のダイバー13人と、タイ海軍の特殊部隊員5人が選ばれ、Xデーが決まった。「誰も経験したことのない救出作戦だった」とアンダーソンは語る。
7月6日には、洞窟内の少年たちに酸素ボンベを運んでいたタイ元海軍特殊部隊の男性ダイバーが死亡。救出作戦で「死者が出るのは避けられないと思った」。
7月8日、救出作戦が始まった。洞窟内の水は濁って視界が悪く、100メートル程度進むのにも数時間かかった。泥水は、酸素ボンベの圧力調整器を故障しやすくするという問題もあった。
少年たちには鎮静剤を投与した。暗く狭い洞窟内での長い潜水で、パニックを起こす恐れがあったためだ。最終的に、3日間で11〜16歳の少年12人と25歳のコーチの全員を救出することができた。作戦成功だ。
だが、救出チームが成功を実感するには時間がかかった。「私たちは感情を切り離す訓練を受けている。任務が完了するまで徹底的に集中しなければならない」とアンダーソンは語る。「だから作戦成功後も感情を取り戻すのに時間がかかった」
同じような救出活動は、もう二度と必要がないことを祈っていると、アンダーソンは言う。
[2018年10月 2日号掲載]
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