レジなしコンビニ「Amazon Go」レポート あまりにスムーズで戸惑う人続出
スピードショッピングにもチャレンジしたこともある。入店のチェックインから商品を掴んでゲートの外にでるチェックアウトまで、猛スピードで行ったのだ。QRコードをかざしてゲート・オープンと同時に全速ダッシュし、反対側にあるサンドウィッチを掴んで、猛スピードでゲートの外にひきかえす行為だ。チェックインからチェックアウトまで3秒程度だった。チェックインでドアが開くため若干の時間ロスとなったが、それでも5秒ぐらいだったと思う。Amazon Goアプリに示された滞在時間は7秒だった。ギネス級に短い買い物スピードでもジャスト・ウォーク・アウトで買い物が認識されるのだ。あまりにも革新的すぎる店舗であるため買い物客が戸惑う様子も報告されている。「本当に商品を持って出ていってもいいの?」と尋ねる人が後を絶たないのだ。
無人ストアではない。日本のコンビニよりもスタッフは多い
よく勘違いされるのだが、Amazon Goは無人ストアではない。日本のコンビニエンスストアよりも、むしろスタッフの多さが際立っている。ゲート前には慣れないお客のためにスタッフが配置され、1号店にあるアルコール売り場には買い物客のIDをチェックするスタッフが常駐している。1号店ではサンドウィッチやブリトーなどを調理するスタッフが10人以上もいるのだ。なお最短では数秒間で買い物を終えることができるため、ピーク時には商品補充が追い付かないほどだ。皮肉にもAmazon Goはレジ係がいないが、その分、補充スタッフが余計に必要となるのだ。
3,000店舗展開で、イギリスにも進出?
ニュースサイトのブルームバーグは9月、Amazon Goが数年で3,000店舗展開になると報じた。内部の情報筋からの話として、アマゾンは今年末までにAmazon Goを10ヵ所オープンし、2019年末に大都市圏を中心に50ヵ所を展開、2021年までには3,000店舗の展開を計画している。なおブルームバーグはAmazon Goの3,000店舗展開についてアマゾンの広報担当者に回答を求めたが、コメントは拒否されたとしている。またイギリスのサンデータイムズは10月8日、アマゾンが100坪(4,000sqft)〜140坪(5,000sqft)の小売りスペースを多数探していることを報じた。Amazon Goのトレードマークをイギリスでも取得しており、海外にも出店するのではないかとの観測だ。
さて、筆者は先月、シアトルにある2号店と3号店に行く機会があった。40坪の2号店は正面入り口から横に広いタイプ、3号店は入り口から奥に深いフォーマットだ。どちらの仕様も1号店と変わりはない。ただ、大きく変わったことといえば買い物バッグが有料になったことだ。以前まで無料で配布していたオレンジ色のエコバッグが99セント、ハンドル部分がついた大きな紙袋が5セントになっている。バッグの買い方は、Amazon Goアプリで入場時のコードを開くと、右下に緑色のバッグマークがでてくる。それをタップし、バッグの数量を入力するだけだ。農家の無人販売と同じで、自分で買い物を申告する「オーナーシステム(Honor System)」となっている。
買い物バッグが有料化した2号店
画期的だが、多店舗展開も2桁どまりの店舗数になるのでは...
近所のビジネスマン以上に観光客が多い1号店ではお土産代わりにエコバッグをゴッソリ持っていく方も少なくない。毎日、数千人規模での来店客数だとコストも相当なものになる。したがってバッグの有料化に踏み切ったのだ。Amazon Goは天井にあるセンサーなどハードウェアだけでも開店時に100万ドル以上の費用になるとみられている。ゲートにいるスタッフやひっきりなしに補充するスタッフなど人件費もすくなくない。一方で販売している商品のほとんどが10ドル以下だ。Amazon Goは画期的な店舗だが、黒字化は難しいのではとみられているのだ。したがってエコバッグも無料とはいかなくなっている。
2年間で3,000店を展開するには毎日4店舗のオープンが必要となる。チェーンストアのようなスケールメリットもいかせない。人件費以上にセンサーやカメラなどのハードウェアを圧縮する必要のあるAmazon Goは黒字化への道のりも遠い。結局、多店舗展開も2桁どまりの店舗数になるのではと推察している。
アマゾンが2年前に公開した動画
○執筆者
後藤文俊(アメリカ流通コンサルタント)
35年近くの在米生活の視点をもとにした流通コンサルタント。「使う」「買う」「返品する」「調理する」「食べる」など実践リサーチを身上とし、数多くの米国小売業の成功・失敗事例から得た知見や洞察で、クライアントの売上・利益増を目的にコンサルティングを行う。「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」で最新情報を発信している。