最新記事

日本政治

第4次安倍内閣がスタート 目玉の「加藤・甘利」ラインでダブル選の思惑も

2018年10月2日(火)19時10分

一方、甘利選対委員長に対しては、来年4月の統一地方選、夏の参院選を重視し、「必勝態勢」を取ったとの受けとめ方が多い。

9月30日投開票の沖縄県知事選で、与党系候補が8万票余りの大差で敗れ、自民党内では来夏の参院選で焦点となる「1人区」の動向が読みづらくなったとの観測が台頭。さらに6年前は、安倍政権の再登場直後の「ブーム」もあり、自民党に強い追い風が吹いていた。それらを勘案すると、大物・甘利氏の実行力で、選挙態勢を強化する必要があったとみられている。

ただ、自民党内では、来年10月実施予定の消費税10%への引き上げが、与党に不利に働くのではないかとの懸念も少なくない。このため、リフレ政策を強く支持する議員などを中心に「増税再延期とセットで、衆参同日選挙を行うのではないか」(別の与党関係者)との観測も絶えず、甘利選対委員長の人事によって、そうした見方が増幅される可能性もある。

他方、今回の内閣改造・党役員人事では、安倍色が当初の想定よりも弱くなったのではないかとの分析もある。

複数の与党関係者によると、一時は「甘利政調会長」説も流れていたという。しかし、岸田文雄氏の続投に落ち着いたのは、自民党総裁選で石破茂・元幹事長が地方票の45%を獲得。安倍首相が「安全運転」志向に傾いた結果ではないかとの受け止めも出ている。

また、総裁ポストを争ったグループに、人事で配慮する必要はないとの声が安倍首相を支持する派閥から出ていたとされるが、結果的には石破派から山下貴司法務政務官を法相に起用した。

今回の改造人事では、安倍内閣として最多の12人が初入閣となった。入閣適齢期とされる衆院当選5回以上、参院当選3回以上で閣僚経験のない「待機組」が80人程度いるなかで、閣僚になれなかった議員の不満を最小化するため、初入閣を増やさざるを得なかったとの評価が、自民党内では多い。

10月下旬には臨時国会が召集される予定で、野党側は9月26日の日米首脳会談で決まった新日米通商交渉の開始を巡り、政府の主張に矛盾点があるのではないかと「手ぐすね」を引いて待ち受けている。

改造後の新メンバーは、早速、その真価を問われることになりそうだ。

(竹本能文※)

[東京 2日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グリーンランド首相「米は島を手に入れず」、トランプ

ビジネス

中国3月製造業PMIは50.5に上昇、1年ぶり高水

ビジネス

鉱工業生産2月は4カ月ぶり上昇、基調は弱く「一進一

ビジネス

午前の日経平均は大幅続落、米株安など警戒 一時15
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中