最新記事

米中関係

15年以内に米中戦争が起きる可能性大、米軍元司令官

U.S.-China War Likely Within 15 Years, Ex-General Says

2018年10月26日(金)16時30分
デービッド・ブレナン

内モンゴル自治区で8月1日の軍創立90年を記念するパレードの準備をする中国人民解放軍 China Daily/REUTERS

<アメリカにとって今後はヨーロッパの重要度が低下するため、NATO諸国は自ら防衛力を強化するべきだ>

米欧州陸軍の元司令官ベン・ホッジスが、今後15年以内にアメリカが中国と戦争をする可能性は非常に高いと警告した。

退役中将のホッジスは10月24日、ポーランドで開かれたワルシャワ安全フォーラムで、ヨーロッパにおけるアメリカの同盟国は自前の防衛力を強化する必要があるだろう、と聴衆に語った。なぜならアメリカは、中国の脅威が増大している太平洋地域に軸足を移すからだ。

「避けられないわけではないが、15年後にアメリカが中国と戦争になる可能性は極めて高い」と、ホッジスは言った。AP通信が伝えた。

ホッジスによれば、米軍は第二次大戦以降ずっとヨーロッパ防衛を主眼にしてきたが、最近のアジア情勢の変化を受けて、今後はヨーロッパへの関心は薄れていくはずだという。「アメリカはヨーロッパの強固な支えを必要としている。中国の脅威に対抗するためにヨーロッパと太平洋地域ですべきことを、一国ですべて成し遂げる能力がアメリカにはない」

2014~2017年まで米欧州陸軍の司令官を務めたホッジスは現在、米ワシントンにあるシンクタンク、欧州政策分析センターに勤務している。

ドナルド・トランプ米大統領は、欧州が安全保障をアメリカに依存し過ぎだとしてNATO(北大西洋条約機構)諸国をたびたび批判してきた。ヨーロッパ諸国は困惑している。

南シナ海問題が火種に

アメリカの現職大統領が公然とNATOを批判したことに、ヨーロッパ諸国の首脳たちは衝撃を受けた。今年7月にブリュッセルで開かれたNATO首脳会議で、他の加盟国が国防費を引き上げなければアメリカはNATOから脱退する、とトランプが脅した、という報道すらあった。

トランプの敵対的な姿勢に左右されることなく、アメリカのNATOに対する関与は「揺るがない」とホッジスは聴衆に語った。「アメリカは今後もヨーロッパに戦力を投入し、軍隊を訓練し、米軍のローテーション展開や常駐も継続するだろう」

だが、それと並行してアメリカは「10~15年後に太平洋地域で武力衝突が発生する事態」に備えていくだろう、と強調した。

中国が周辺国と領有権を争う南シナ海が、米中戦争の引き金になる可能性がある。中国は自国の領有権を主張するため、一方的に人工島を造成するなど着々と軍事要塞化を進めている。同海域では中国のほか、ベトナム、フィリピン、台湾、ブルネイ、マレーシアも領有権を主張している。

中国は人工島に電波妨害装置を設置し、弾道ミサイルや核搭載可能な爆撃機の滑走路まで建設した。それに対してアメリカは、南シナ海は国際水域であると主張し、米軍の艦船や航空機による「航行の自由」作戦を展開してきた。

9月30日には中国の駆逐艦が、「航行の自由」作戦を実行中だった米イージス駆逐艦に異常接近した。それは「あらゆる側面で米中の緊張関係と競争が激化している証だ」、とホッジスは言った。

中国がアメリカの先端技術を盗んだり、世界各地のインフラ整備を支配する目的で多額の貸し付けを行う「債務外交」を繰り広げていることにも、アメリカは神経をとがらせている。


(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中