最新記事

貿易戦争

米中貿易戦争第3ステージへ 慌てぬ中国、トランプは勝てるのか

Can U.S., Donald Trump Win the Trade War With China?

2018年9月19日(水)19時00分
デービッド・マギー

江蘇省連雲港に並ぶ輸出用SUV車(2018年4月)REUTERS

<トランプには勝つ自信があるようだが、中国は通関を遅らせるなど関税以外の武器も駆使し始めている。トランプの任期中には解決しないという声も>

ドナルド・トランプ米大統領と中国は今や、本格的な貿易戦争に突入した。そしてこの戦いは、さらに長期的かつ大がかりな局面になだれこもうとしている。

「これまで警告してきたことが現実になった。両国の関係は、ついに最悪のスパイラルに陥ったようだ」と、中米国商工会議所のウィリアム・ザリット会長は言う。

トランプにとって中国製品の関税引き上げは、アメリカの労働者を守るために世界貿易のバランスを取り戻すという選挙公約の延長線上にある。彼にとって、2017年の時点で3360億ドルと推定される対中貿易赤字は到底容認しがたいものだ。

だが中国との貿易戦争が本番を迎えた今、新たに大きな疑問が浮上している。トランプは、そしてアメリカは勝てるのか?

中国はハイテク産業でアメリカをしのぐ製造強国をめざすことを宣言している。その象徴が「中国製造2025」構想だ。ロボティクスその他のあらゆる先進技術分野で競合できる強い中国企業の創造を目的とする

AP通信によると、アメリカは中国の計画を「盗んだ技術」に基づくものだと主張。中国市場の開放という約束違反でもあり、産業界におけるアメリカの覇権を脅かしかねないと見ている。

アメリカ国内に中国の計画を警戒する声があるのは確かだ。だが一方で、トランプが貿易戦争を開始し、9月17日には中国からの輸入品2000億ドル(22兆円)相当という巨額の制裁関税の第3弾を発表したことには懸念も大きい。関税は9月24日に発動する。

 関税以外の手で米企業を攻撃

トランプの発表の翌日、中国は報復措置として、コーヒー、蜂蜜、工業用化学物質を含むアメリカからの輸入品600億ドル相当に対する関税の引き上げを発表した。

中国は、戦いの場を関税以外の分野にも広げようとしている。一見すると、アメリカの対中赤字が3360億ドルにも達していることから、高い関税でアメリカに輸出ができなくなれば困るのは中国のように見える。単なる報復合戦なら、アメリカからの輸入額がはるかに小さい中国のほうが、先に関税をかける輸入品が尽きてしまうからだ。

だが中国は関税以外に使える攻撃方法を用意し、米企業に打撃を与えるために流通を妨害している。

「米企業はすでに中国規制当局に活動を妨害されているようだ。中国と上海の米商工会議所の調査では、調査に応じた企業430社以上の52%が、通関が遅れており、検査と官僚的な手続きが増えていると答えた」と、AP通信は報じた。

中国はまた、関税引き上げで、アメリカとトランプにとって、最大の泣き所をついている。

AP通信によると、アメリカによる関税引き上げの対象になっているのは、中国の不公平な産業政策の恩恵を受けているとみられる品目だ。一方、中国の関税は2016年の大統領選挙でトランプを支持した州の主要産物である大豆などの農産物を標的にしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

伊藤忠、西松建設の筆頭株主に 株式買い増しで

ビジネス

英消費者信頼感、11月は3カ月ぶり高水準 消費意欲

ワールド

トランプ氏、米学校選択制を拡大へ 私学奨学金への税

ワールド

ブラジル前大統領らにクーデター計画容疑、連邦警察が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中