東京で数千人死亡の試算も 台風やゲリラ豪雨急増で大都市洪水の対策急がれる
自宅が水没
1947年、カスリーン台風による大雨で東京にも大規模な洪水が発生、全国で1000人以上が犠牲となった。
この洪水を体験した葛飾区東新小岩の町会長・中川栄久氏(82)は、軒下まで達した水から逃れ、1階建ての自宅の屋根の上で父親と一緒に3週間過ごしたと当時を振り返る。
隣の2階家には、近所の人が13人避難していたという。「その中に、明日生まれてもおかしくないような大きいお腹をした女性がいた。お産婆さんは呼べないし、医者には連れて行けないし、どうしたらいいのか皆心配していた。妊婦さんが死んだらどうしようかと思うと、子供ながら眠れないようなことだった」と中川氏は語った。
さらに同氏は当時と今を比べ、「今なら大変だと思う。(これだけ家が密集して)そこに水が来たら、どうにもならないのではないか」と懸念を示した。
短時間に降る集中豪雨は、日本全体で増加している。1時間に80ミリ超の降雨は、1976年―85年の10年間の年平均11回に対し、2017年までの10年間では18回に増えた。
科学者は、これには地球温暖化が関係していると指摘する。東大の片田氏は「地球温暖化は海洋気象において一足先に進んでいると言われる。平たく言うと、海水温が高ければ膨大な水蒸気量が上がる。だから1回の雨が非常に多いということになり、台風も強大化しやすい」と述べた。
9月初めにも、西日本を襲った台風21号による高潮で関西国際空港が浸水し、一時閉鎖された。この台風では少なくとも13人が死亡した。
避難の困難さ
8月下旬、東京東部の海抜が低い地帯にある江東5区が共同でハザードマップを発表し、大規模水害の際には合計約250万人の住民に避難を呼びかける方針を示した。
ハザードマップには、それぞれの区域でどの程度の浸水被害が起きるか、どのくらいの期間水害が続くかが示されている。
しかし、7月の西日本の水害では、あらかじめ配布されていたハザードマップの内容についてきちんと確認していない住民が多かったことが明らかになった。
リバーフロント研究所の土屋氏は、今回のハザードマップでは、およそ90%のエリアが水没する結果になったとし、そのエリアの住民250万人に、中央区、千代田区、北区などの水没する地域、そこで昼間働いている他の地域からの300万人を加えると「この大規模水害がもし昼間に起こったとすると、500万人を超える人々を避難させなければならないという大災害になってしまうだろうと考えられる」と警告する。