中国怒らせた南洋の小国パラオの苦悩 チャイナマネー捨て台湾と国交続けられるか
量から質へ
パラオのレメンゲサウ大統領は、観光規制について中国政府から公式の通知は受けていないと話った。
「われわれや台湾の外交的友好国に対し、中国が自国に乗り換えてほしいと考えているのは周知の事実だが、1つの中国政策はパラオが決められるものではない」。レメンゲサウ大統領はパラオ第2の町ミューンズでロイターにそう語った。
現在2期目で2021年1月に任期が終わるレメンゲサウ大統領は、パラオは中国からの投資や観光客を歓迎するが、政権の方針や民主主義の理念上では、台湾により共感すると話した。
パラオは、団体旅行客よりも多くのおカネを落としてくれる個人客に注力することで、中国人観光客の減少に対応している、と大統領は説明。団体観光客によって、これまで環境に悪影響が出ていたという。
パラオの人気観光スポットだった塩水湖ジェリーフィッシュレイクは、クラゲの激減によって2017年に閉鎖された。多数の観光客が訪れたことがその原因とされている。
「現実には、パラオにとって(観光客の)数が大きな利益を意味していたわけではない。(今回の減少により)われわれは量ではなく質の政策を模索する決意をより強くした」そう語るレメンゲサウ大統領は2015年、パラオ領海のほとんどを海洋保護区に指定している。
影響力を構築
ミクロネシア連邦とマーシャル諸島、そしてパラオの3カ国は、米国と自由連合盟約を締結しているが、複数のパラオ元政府高官によれば、同盟約が2023年と2024年に期限を迎える前に、中国は同地域における自身の影響力を固めようとしている。
米国は、年平均で約2億ドル(約220億円)の財政支援を3カ国に提供し、防衛を担っている。3カ国とも国際連合に加盟している。
米国政府は昨年12月、パラオに対して2024年まで1億2400万ドル規模の経済支援を行うことを遅れて承認したものの、同盟約の延長については方針を明らかにしていない。
ミクロネシアの元政府関係者によれば、中国は、自身の掲げる経済圏構想「一帯一路」をパラオにも広げようとしており、同盟約が期限を迎えた後は、重大な投資を提供する可能性があると話す。
「中国は攻勢をかけている」と、パラオのトリビオン前大統領は語る。「われわれは投資家を必要としており、それはパラオと中国の関係における大きな要素だ」
「台湾が好きだ。だが台湾人でさえ、今では中国を必要としている。ビジネスマンも中国を必要としている。彼らは政治的な成り行きなど考えていない。経済を考えている」と、2013年まで大統領を務めたトリビオン氏は語った。
パラオは、台湾から年間1000万ドルの支援のほか、医療や教育の奨学金を受けている。
レメンゲサウ大統領は、米国との盟約が満期を迎えた後の資金支援について、中国と公式な協議はしていないとしつつも、政府内で検討を始めていると述べた。