深刻なホテル不足から、一気に供給過剰が問題となっている韓国・ソウル
一気にホテルの供給過剰が問題になっているソウル Mlenny-iStock
<2012年には深刻なホテル不足が問題になっていた、韓国・ソウル。規制緩和と情勢変化で一気に供給過剰が問題になっている>
ソウルでホテルの供給過剰が続いている。韓国有数の繁華街である明洞エリアの3つ星や4つ星級のホテルが、通常10万ウォン台の宿泊料を平日1泊6万ウォンから8万ウォンに割引いて販売し、東南アジアの団体客に4万から5万ウォンの価格を提示するホテルも現れた。
稼働率は上がったが利益が出ない状況で、ホテルの売却を検討している企業もあると韓国経済新聞は伝えている。
規制緩和でホテルが乱立し、東日本大震災の余震の影響でホテル不足に
ホテルの供給過剰は政府の規制緩和に端を発している。年間600万人台で推移していた訪韓外国人は2012年に1000万人を突破した。外国人観光客の増加に加えて、東京に拠点を置く欧米系企業等が、東日本大震災の余震が続く東京を避けてソウルのホテルを仮事務所として利用するなどホテル不足が深刻化な課題となった。
政府は2012年7月から2016年までの時限措置として建設要件を緩和する「観光宿泊施設拡充に向けた特別法」を制定し、韓国企業に加えて外資系企業もホテル建設に乗り出した。
明洞だけで40軒増加している。統治時代に日本人街として発展し、1988年のソウル五輪と前後して外国人を迎える商店街として発達した地域で、建物の老朽化が進んでいる。外装だけ新しくして土台や柱は統治時代から更新されていない建物が少なくない。
土地が限られるソウルは中高層建築を好む地主が多く、容積率を緩和する特別法は老朽化した建物を建て替えるきっかけになったのだ。中国人の増加がホテルへの建替えを後押しし、低層階に商店が入居する「ゲタばき」ホテルが乱立した。
2012年に786カ所だった韓国のホテルは、2017年には1617カ所まで倍増し、2018年もさらに100カ所ほどのホテルが新しくオープンする見込みである。
外資ホテルや日本からの進出
フランスのアコーズホテルズは2017年10月にソウル龍山駅に隣接する敷地にドラゴンシティを開業した。4つのホテルとコンベンションからなる複合施設で、客室総数1700室を有する韓国最大のホテルだ。アコーズホテルズは2021年までに9軒のホテルを開業する予定で、提携先と合わせて30軒を超える韓国有数のホテルチェーンを目指している。
日本からの進出も相次いでいる。東横インは2009年8月のソウル東大門を皮切りに2018年8月時点で9軒のホテルを展開している。共立メンテナンスは2014年と15年にソウル江南に2軒のドーミーインを開業し、西日本鉄道も2015年に明洞にソラリア西鉄ホテルを開業した。2018年には相鉄グループがソウル市内で2軒を開業し、藤田観光のホテルグレースリーが8月にオープンする。