最新記事

貿易戦争

「トランプが大豆産業を壊滅させた」──悲鳴を上げるアメリカの大豆農家

Soybean Farmer: Trump's Trade War Has 'Devastated' Industry

2018年8月13日(月)19時00分
ラムゼイ・タッチベリー

貿易戦争はトランプの支持層を直撃した(写真はノースダコタ州の大豆農家、今年7月) Dan Koeck-REUTERS

<中国からの報復関税に追い打ちをかける価格下落、トランプ政権が打ち出した支援策も焼け石に水でしかない>

ドナルド・トランプ米大統領と中国との間の貿易戦争に巻き込まれたアメリカの大豆農家を、さらに価格下落が襲った。先週末10日に大豆先物は4.5%以上も値を下げた。

トランプ政権による25%の追加関税への報復として、中国が7月にアメリカ産大豆に同様の25%の追加関税を科したことで、大豆農家はすでに「壊滅的な」影響を被っている。

「貿易戦争がここの大豆農家に与えた影響は壊滅的だ」と、オハイオ州の大豆農家クリス・ギブスは経済専門チャンネルCNBCに10日、語った。「(これまでに)価格は20%も下落している」

そこへさらに追い打ちをかけたのが、米農務省が10日に発表した2018〜19年度の大豆の生産量予測。過去最高水準の1.2億トン以上になる見込みで、大豆相場は大幅下落した。

「貿易戦争で大豆農家が最大の顧客を失ったところに、さらに悪化させる事態だ」とギブスは言う。

食用油や家畜飼料の原料となる大豆は、アメリカから中国への農産物輸出(総額で200億ドル)の約60%を占める。量にして3750万トンだ。

もはや補助金が頼みの綱

この数カ月の間に、トランプは中国製品に対する多額の関税を発動してきた。また、ヨーロッパやカナダ、メキシコからの鉄鋼やアルミニウム製品にも追加関税をかけた。アメリカの保護貿易措置が6月に発動されて以降、トウモロコシや大豆の価格は大幅に下落。米北東部のロブスター漁などの産業も大きな打撃を受けている。

トランプ政権が仕掛けた貿易戦争によって、アメリカで40万人の雇用が失われるという予測も出ている。

トランプは相変わらずツイッターで自らの政策を自己弁護している。先月には「関税は最高だ!」と、ツイッターで投稿した。「アメリカに損をさせてきた国は、交渉で公平な取引を決めるか、関税をかけられるかのどちらかだ。今のアメリカは金をむしり取られる、ブタの貯金箱のようなものだ。(関税で)すべてがうまく行く!」

農家に対する総額120億ドルの支援策が打ち出されたが、これが実現したとしても、生産者が被った収入減のすべてを埋め合わせることはできない。

大豆農家のギブスは、大豆やトウモロコシ、干し草を生産し、牛を育てる約230万平米の農場を維持するために、2万5000ドルの資金援助が必要になるだろうと話す。それだけの支援を受けられるかどうか「まったくわからない」と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中