「いっそ戦争でも起きれば」北朝鮮国内で不気味な世論が台頭
米朝首脳会談以降「戦争待望論」は影を潜めていたのだが REUTERS/KCNA
<建国70周年の記念行事のために「忠誠の資金」の上納を求められ、困窮した国民の間で「戦争待望論」が再び頭をもたげつつある>
毎年9月9日は北朝鮮の建国記念日(9.9節)だ。今年は建国70周年ということもあり、当局はかなりの気合を入れて関連行事、事業の準備を進めているようだが、北朝鮮国民はそのしわ寄せで生活が成り立たないような状況に追い込まれている。
羅先(ラソン)にある中朝合弁企業に勤める咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、今月の給料を受け取って驚愕した。300元のはずなのに100元しかもらえなかったからだ。(100元は約1600円)
「事前の説明がないままに『忠誠の資金』の名目で天引きされてしまった」(情報筋)
北朝鮮当局は、建国70周年を控えて関連行事を盛大に開くことを計画しているようだ。それのみならず、建国記念日を飾る高級リゾート「元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区」の建設事業を進めている。
北朝鮮では、重要な記念日に合わせて建設プロジェクトの完成を急ぐあまり、死亡事故が相次ぐ現象が繰り返し起きている。
このリゾートも同様で、当局はさらに、不足する建設費を賄うため国民のカネを巻き上げているということだ。
「以前にも勝手に天引きされることはあったが、今回のように3分の2も持って行かれたことはなかった。1ヶ月に200元でも苦しいのに100元しかもらえず、どうやって生きていけばいいのか目の前が真っ暗だ」(情報筋)
同じ会社で働く夫婦は2人で200元しか受け取れなかった。平均的な4人家族の1ヶ月の生活費が50万北朝鮮ウォン(約6500円、約410元)であることを考えると、とても暮らしていけない。夫婦は「いくら働いても手元にはほとんど残らないほどなのに、もしかして来月も天引きされるかもしれない」と心配している。