アルゼンチン、ペソ安止まらず 中央銀行が主要政策金利60%に引き上げ
8月30日、アルゼンチン中央銀行は、主要政策金利を45%から60%に引き上げた。写真はアルゼンチン中央銀行。ブエノスアイレスで撮影(2018年 ロイター/Marcos Brindicci)
アルゼンチン中央銀行は30日、主要政策金利を45%から60%に引き上げた。31%を超えているインフレ率を制御すると同時に、自国通貨の一段の下落に歯止めをかけたい考えだが、大幅な利上げにもかかわらずアルゼンチンペソはこの日の取引で一時約20%下落し、終値ベースで最安値を更新した。
中銀は声明で、金融政策委員会の緊急会合を開き、「外国為替相場を巡る情勢、およびインフレ高進のリスクに対応するため」全会一致で利上げを決定したことを明らかにした。
ただ利上げにもかかわらずアルゼンチンペソ
中銀は利上げと同時にこの日は3億3000万ドル規模の市場介入を実施。今週に入ってからの介入規模はすでに10億ドルを超えた。年初からの介入規模は135億ドルを超えており、外貨準備は現在は543億ドルとなっている。
マクリ大統領が前日、国際通貨基金(IMF)に対し500億ドルのスタンドバイ取り決めに基づく融資の早期実施でIMFと合意したと表明したことをきっかけに、同国を巡る市場の動乱が勃発。マクリ大統領がアルゼンチン政府の来年の債務に対応する能力に対する「市場の信頼が欠けている」と認めたことで、市場でパニック的な売りが広がった。アルゼンチンでは来年、249億ドルのペソ建てと外貨建ての債務が償還を迎える。
IMFはその後、金融市場の混乱を受け融資実施を早めることを検討していることを明らかにすると同時に、アルゼンチンは金融、財政政策の強化が必要との見解を示した。
マクリ大統領はこの日、政府は「財政強化のプロセスを速める方策を検討する」と述べた。ただペソは対ドルで年初から約54%下落。フィデリティのポートフォリオマネジャー、ポール・グリア氏は「経済は向こう12カ月にわたりハードランディングの景気後退(リセッション)に向かっているようだ」と懸念を示した。
ペソ下落に歯止めがかからない中、アルゼンチン国債利回りと米国債利回りの格差はこの日の取引で2015年1月以来の水準に拡大。IHSマークイットのデータによると、アルゼンチンの5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は696ベーシスポイント(bp)と、前日から43bp拡大した。
借り入れコストの上昇や政府の歳出削減策、干ばつによる国内農業部門への打撃で、アルゼンチン経済は第3・四半期に景気後退(リセッション)入りすると予想されている。