インドネシアの老呪術師が少女を15年間監禁 性的虐待の日々
周到な嘘で両親を騙した呪術師
HSさんの行方が突然不明となった2003年当時、ジャゴ容疑者はHSさんの両親に対し「HSは仕事を探しに首都のジャカルタに行った」と嘘の占いを告げていた。さらに、嘘がばれないようにと時々両親に菓子類を届け「娘さんがジャカルタで働いて得たお金で購入して送ってきたものだ」と虚偽の話しをでっちあげて両親を安心させていたという。
その後ジャゴ容疑者は「消息が分からなくなった」と連絡が途絶えたことにし、両親も長期に渡る音信不通にHSさんのことは諦めるようになった。
警察の捜査でジャゴ容疑者の犯行は極めて用意周到かつ計画的であり、さらなる捜査で事件の全容を解明したいとしている。しかしイスラム教徒の間でも地方では民間信仰が現在も根強い。呪術師や魔術師などは特殊技能をもつ霊能者として村落コミュニティーでは尊敬され、信頼される立場をいまだに維持している。そうした風習が事件の発覚を遅らせ、さらに事件の全容解明を困難にしていることも事実としてある。
国家人権委員会女性問題部会では「ジャゴ容疑者が村人から絶大な信頼を得ていたことからすると、HSさん以外にも被害者がいる可能性がある」として警察に徹底した捜査を求めると同時に、救出されたHSさんの精神的なトラウマに対する行政の細やかな医学的、心理的なケアが必要だと訴えている。
ジャゴ容疑者の息子、HSさんの姉も事件に何らかの関与があったのではないかとの疑いから現在警察による事情聴取を受けている。ジャゴ容疑者は裁判になった場合、最高刑で禁固15年になる可能性があるという。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら