米中貿易戦争、裏ワザの超法規的「報復」を中国がもくろむ
CHINA’S NEXT STEPS
第3の措置は、事業免許制度を通じた営業妨害だ。中国ではほとんどのビジネスに免許が必要とされるが、その取得プロセスは「曖昧で、漠然としており、裁量的である」と、最近のホワイトハウスの報告書は指摘している。2017年以降、韓国のビデオゲームメーカーは中国で事業免許を取得できなくなっており、米企業も事業免許の取り消しや、取得プロセスの遅延といった事態に直面する可能性がある。
中国が取り得る第4の措置は、海外旅行の規制だ。中国政府はこれまでにも、旅行代理店に団体旅行の販売を禁止するなどして、買い物好きな中国人観光客がフィリピン、台湾、韓国に渡航するのを制限してきた。これにより韓国の観光業界は推定156億ドルの損失を被り、40万2000人の雇用が失われたとされる。
訪米中国人の多くは個人旅行者だから、同じような規制は難しいかもしれない。それでも中国政府は最近、アメリカでは詐欺や殺人が増えているとして、正式に渡航注意を喚起した。この影響で渡米者が減れば、中国人がアメリカにもたらす観光収入(年間330億ドル)が減少する恐れがある。
第5の手段は、アメリカ製品と企業の非公式ボイコットだ。2012年に尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権争いが深刻化すると、中国政府は国営メディアを通じて日本企業のボイコットを一般市民にそそのかした。この結果、多くの日系商業施設、工場、企業が大きなダメージを受けた。
同じ手法が米企業に対しても取られれば、中国の消費者は国内に3300店舗あるスターバックスを避けたり、iPhoneではなく小米(シャオミ)科技のスマートフォンを買ったりするようになるかもしれない。
こうした質的措置は中国にも痛みをもたらすだろう。ターゲットとなった米企業の中国人社員が失業したり、中国の下請け企業が経営難に陥ったりするかもしれない。だが、アメリカの輸出産業や、中国本土で事業活動をする米企業、そしてアメリカの消費者はもっと大きなダメージを受ける可能性が高い。他方、アメリカ製品の代替に選ばれた中国のメーカーは、長期的な市場シェア争いで優位に立つだろう。
また、5つの措置は超法規的性格のものだから、中国は柔軟に(別の言い方をすれば恣意的に)運用することができるし、WTO(世界貿易機関)のルールに明確には違反していないと言い逃れすることもできる。さらに今後の貿易交渉で、中国はこれらの措置を撤回する「譲歩」を持ち掛けることで、アメリカからもっと実質的な譲歩を引き出すこともできるだろう。
アメリカも当面は、報復関税合戦を続けることができる。しかし中国と同じレベルの質的報復措置を取るのは難しいだろう。アメリカでは外国企業の事業活動と投資活動を守るシステムが確立されているからだ。しかし「量的かつ質的」措置をちらつかせる中国との貿易戦争においては、アメリカの先進的なシステムが、アメリカ自身にダメージを与える可能性がある。
From thediplomat.com
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