傍若無人なトランプ欧州歴訪で同盟国に混乱 陰で笑うロシア
7月16日、トランプ米大統領の1週間にわたる欧州訪問は、同盟国の心情をかき乱した一方で、ロシアのプーチン大統領がほくそ笑む結果となった。写真はホワイトハウスに戻ったトランプ大統領夫妻(2018年 ロイター/Yuri Gripas)
トランプ米大統領が16日に終えた1週間にわたる欧州訪問は、同盟国の心情をかき乱した一方で、ロシアのプーチン大統領がほくそ笑む結果となった。
ベルギー、英国、フィンランドと立ち寄ったトランプ氏は再三、北大西洋条約機構(NATO)諸国を愚弄(ぐろう)するような発言をした。それとは対照的に、米国情報当局が2016年の米大統領選にロシアが介入したと結論を下したにもかかわらず、プーチン氏の機嫌を取ろうとする意図を隠さなかった。
こうしたトランプ氏の態度から、今回の外遊は就任以来最も強い批判を浴びる形となっている。
今回の日程中、つつがなく運んだと言えるのは、自身が所有するスコットランドのゴルフ場でのプレーと、エリザベス英女王との面会ぐらいだった。もっともトランプ氏が女王を待たせ、前を歩いたことも物議を醸している。
ブリュッセルのNATO首脳会議に際してトランプ氏は、同盟諸国を混乱に陥れた。各国の防衛予算拠出が不十分だとこき下ろした後、今度は拠出公平化に向けた取り組みを称賛したからだ。会議2日目には45分遅刻しながら、議論のテーマを乗っ取ってしまった。
バルト海の資源輸出パイプラインを支持しているドイツについては「ロシアの人質」になっていると批判してメルケル首相を侮辱したかと思えば、メルケル氏とはすばらしい関係を築いていると強調するありさまだった。
またトランプ氏はメイ英首相との会談前に、最近メイ氏と対立して外相を辞任したボリス・ジョンソン氏を立派な首相になると新聞のインタビューで持ち上げ、メイ氏が打ち出した欧州連合(EU)離脱方針に「ダメ出し」をしながら、一転してメイ氏を偉大な指導者と呼んだ。
これらのトランプ氏の無軌道ぶりを受け、あるNATO関係者は「トランプ氏(の言動)がやがて成熟するという期待は欧州では消え去り、われわれはもはやそうした幻想は持っていない」と話した。
英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の米州プログラム責任者レスリー・ヴィンジャムリ氏は、トランプ氏が最初にツイッターを通じて同盟国を批判し、その後公式の場で全てうまくいっていると宣言するやり方は、意図的に思われるとの見方を示した。この二面性を効果的に使い分けているのだという。