最新記事

FUJIFILM×マグナム・フォト共同プロジェクト「HOME」

【写真特集】写真家たちが映し出した自分自身の「ホーム」

2018年7月18日(水)19時30分
Magnum Photographers

<Photographs by Thomas Dworzak>

pphome03.jpg

1946年に追放されるまで、自宅と農場があったチェコの村モラビアを見下ろす高台を歩く父

父はチェコスロバキアから追放され、難民となってドイツにやって来た。「鉄のカーテン」から程近いバイエルン州の小さな町で育った私は、カトリックの教えと田舎くささと秩序と平穏で息苦しいほど硬直した世界から抜け出したい、とずっと願っていた。

やがて私は、ジョージア(グルジア)の首都トビリシに住まいを見つけた。それから30年、その地の歴史的に最も暗い瞬間と、21世紀の成功物語を体験してきた。私は常にトビリシの友人や町の匂い、言葉や音や味に恋焦がれている。意識的に長期間にわたってジョージアから距離を置くようにしているのは、いつでも戻れると思っているから。それでも、私が外国人であることに変わりはない。

そしてイランの首都テヘラン。そこで私は妻と出会い、家族という愛を見つけた。彼女は1979年のイラン革命で命からがらスペインに逃れ、80年代末にテヘランに戻った。この町の文化は私にとってはとても異質だが、それでも親しみを感じられる場所だ。

10年以上、バイエルンを恋しく思ったことはなかった。それなのにある時から突然、子供の頃は嫌いだったクラシック音楽を聴き始め、伝統やしきたり、土地の食べ物、緑の丘と森を懐かしく思うようになった。

そうした人生を送ってきた私は今回のプロジェクトのためトビリシで友人と1週間を過ごし、次の1週間はテヘランで妻と家族と過ごした。そして最後の1週間は、バイエルンに戻って父と会い、彼が6歳のときに追放されたチェコの村を一緒に訪れた。

──トーマス・ドボルザック

pphome04.jpg

トビリシにあるレストランのテラス席で友人たちとディナーを楽しむ

pphome05.jpg

自分が通っていた高校を初めて再訪した妻サハル。イラン革命時にスペインへ逃れた彼女だが、のちにテヘランに戻ることを選んだ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中