最新記事

米経済

トランプ経済「絶好調」はただの幻想? 見えてきた失速の要因

2018年7月10日(火)17時40分
ビル・サポリト

「建国以来最高の好景気」を自画自賛し続けるトランプだが…… PHOTO ILLUSTRATION BY CJ BURTON. SOURCE PHOTO: C.J. BURTONーCORBIS/GETTY IMAGES, WIN MCNAMEE/GETTY IMAGES (TRUMP'S FACE)

<政権発足当初は好調な滑り出しに見えたが、移民締め出しや貿易戦争などのアメリカ・ファースト路線が逆効果を生み始めた>

昨年1月、ドナルド・トランプが大統領に就任したとき、アメリカ経済は空前の好景気を謳歌し、大不況のどん底から目を見張る回復を遂げつつあった。

それでも物足りなく感じたトランプは、アメリカ経済をフル充電すると請け合った。与党の共和党が総額1.5兆ドルの景気刺激策を成立させると、約束を果たすことは簡単に見えた。

トランプに経済政策を助言していたローレンス・カドロー(現在はホワイトハウスの国家経済会議委員長)は、「見通せる限りの未来にわたり3~4%の経済成長」が見込めると、昨年12月に語った。「アメリカ経済は絶好調だ。空前の好景気だ」と、トランプも今年春にツイッターに投稿している。「今後、もっとよくなる」

しかし、風向きが変わってきた。失業率とインフレ率は抑えられていて、今年第2四半期のGDP成長率も「3~4%」を超す可能性があるが、一部のエコノミストはバラ色の予測を修正し始めている。原因は、トランプその人だ。「アメリカ・ファースト」の政策が逆効果になりつつあるように見える。

移民政策はその一例だ。アメリカがGDPを成長させるには、人口増が欠かせない。GDPの70%近くを占めている個人消費は、消費者の人口が多いほど大きくなるからだ。

ところが、アメリカの人口増加率は年間1%に満たない。人口の多いベビーブーム世代は仕事の一線を退き、昔ほど活発に消費しなくなっている。しかも、この世代は次第に世を去り始める。アメリカが移民を締め出せば、消費が拡大せず、雇用もあまり生まれなくなるのだ。

移民の締め出しは、消費需要だけでなく、労働力の供給にも悪影響を及ぼす。多くのリゾート地は、夏の観光シーズンを前に外国人労働者の確保に苦労している。トランプ政権下で、ビザの発給が遅れたり、拒否されたりするケースが多いためだ。

現政権の移民政策の影響は、住宅市場にも及んでいる。建設業界の人手不足が深刻化し、住宅価格が上昇しているのだ。カナダ産の針葉樹材への関税が導入されたことも、住宅価格を上昇させる一因になっている。

「目に見えない景気減速」

大型減税も、経済成長を牽引する効果を発揮できていない。減税の恩恵に浴したのは、主として企業と富裕層だった。企業は減税で浮いた金を、生産活動への投資や賃上げではなく、自社株買いに回した。自社株買いは株価を上昇させ、株主に恩恵を与えるが、株式投資をしている人は中流層と上流層が中心だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争志願兵の借金免除、プーチン大統領が法

ワールド

NATO事務総長がトランプ氏と会談、安全保障問題を

ビジネス

FRBが5月に金融政策枠組み見直し インフレ目標は

ビジネス

EUと中国、EV関税巡り合意近いと欧州議会有力議員
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中