NATO会議と米ロ会談:無知なトランプの訪欧に震えるヨーロッパ
トランプは自分が国益を推進し、擁護していると主張しつつ、まさにその国益を損なう政策を打ち出している。そこに戦略的一貫性を見出すことは不可能だ。
たとえば、欧州各国に対する防衛費増額要求とNATOに対する攻撃は、トランプの意図とは反対の結果を生み出している。例えば、ドイツではトランプに対する不信からトランプが主張する防衛費の増額を支持する政治家はいなくなった、と匿名の情報源は言う。
またトランプがドイツ大使に任命したリチャード・グレネルは、欧州各国の現政権と対抗する右派勢力に「力を与えたい」と発言した。これは途方もない傲慢さと同時に、ドイツの歴史に対する理解の欠如を表している。そのような勢力が力を得る危険性をまるでわかっていない。
トランプに対する懸念は、後でまったくの杞憂だったということになるかもしれない。NATO会議は欧州の結束を再確認し、防衛を強化するものになるかもしれない。また、トランプはプーチンに対し、一方的な譲歩などしないかもしれない。
しかし、6月12日の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談後、トランプが一方的に米韓共同軍事演習を中断したことを思うと、ヨーロッパに楽観的な材料は見当たらない。
得をするのは誰なのか
ヨーロッパは軍事的にも政治的にも防衛にもっと力を注ぐ必要がある。そして各国の政府に、進んで物事に立ち向かうべく圧力をかける必要がある。しかし、世界史上最大の同盟の団結を、無知と不機嫌、無理解から崩壊させることが、欧米の利益につながらないことは確かだ。
プーチンに労せずして勝利を与えることは、アメリカと欧州が弱体化し、腐敗しているという彼の確信を強化させるだけではない。欧州における新たな戦争の扉を開くことにもなる。そしてその結果から利益を得るのは誰だろうか。
This article first appeared on the Atlantic Council site.
Stephen Blank is a senior fellow at the American Foreign Policy Council.
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