最新記事

安全保障

NATO会議と米ロ会談:無知なトランプの訪欧に震えるヨーロッパ

2018年7月4日(水)19時45分
ステファン・ブランク(米外交政策評議会上級研究員)

トランプは自分が国益を推進し、擁護していると主張しつつ、まさにその国益を損なう政策を打ち出している。そこに戦略的一貫性を見出すことは不可能だ。

たとえば、欧州各国に対する防衛費増額要求とNATOに対する攻撃は、トランプの意図とは反対の結果を生み出している。例えば、ドイツではトランプに対する不信からトランプが主張する防衛費の増額を支持する政治家はいなくなった、と匿名の情報源は言う。

またトランプがドイツ大使に任命したリチャード・グレネルは、欧州各国の現政権と対抗する右派勢力に「力を与えたい」と発言した。これは途方もない傲慢さと同時に、ドイツの歴史に対する理解の欠如を表している。そのような勢力が力を得る危険性をまるでわかっていない。

トランプに対する懸念は、後でまったくの杞憂だったということになるかもしれない。NATO会議は欧州の結束を再確認し、防衛を強化するものになるかもしれない。また、トランプはプーチンに対し、一方的な譲歩などしないかもしれない。

しかし、6月12日の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談後、トランプが一方的に米韓共同軍事演習を中断したことを思うと、ヨーロッパに楽観的な材料は見当たらない。

得をするのは誰なのか

ヨーロッパは軍事的にも政治的にも防衛にもっと力を注ぐ必要がある。そして各国の政府に、進んで物事に立ち向かうべく圧力をかける必要がある。しかし、世界史上最大の同盟の団結を、無知と不機嫌、無理解から崩壊させることが、欧米の利益につながらないことは確かだ。

プーチンに労せずして勝利を与えることは、アメリカと欧州が弱体化し、腐敗しているという彼の確信を強化させるだけではない。欧州における新たな戦争の扉を開くことにもなる。そしてその結果から利益を得るのは誰だろうか。


This article first appeared on the Atlantic Council site
.

Stephen Blank is a senior fellow at the American Foreign Policy Council.

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米関税「根拠ない」、欧州企業は対米投資中止を=仏大

ワールド

カナダ首相、米に対する限定的な対抗措置発表 トラン

ワールド

米関税措置の「免除困難」、引き下げ巡り各国と協議継

ビジネス

政策調整急がず、現状の金利は適切な水準=FRB副議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中