最新記事

米外交

米大使また辞任、トランプの同盟国叩き耐えられず

2018年7月2日(月)16時20分
ロビー・グレイマー(フォーリン・ポリシー誌記者)

今月のNATO首脳会議でも物議を醸しそう(写真は2017年5月、欧州諸国の資金負担が足りないと批判したトランプ。左はNATOのストルテンベルグ事務総長) Jonathan Ernst-REUTERS

<外交官として33年のキャリアをもつエリートさえも、トランプの欧州批判やNATO軽視発言についていけず辞職を決意>

アメリカの駐エストニア大使を務めるジェームズ・メルビルはベテランのエリート外交官だ。そんな彼が6月29日、友人たちに対してドナルド・トランプ米大統領が欧州の同盟諸国について連発した問題発言を受けて大使の職を辞すると明らかにした。

メルビルは2015年から駐エストニア大使を務めている。外交官としてのキャリアは33年で、近々退職することが決まっていたが、個人としてのフェイスブックへの投稿で、トランプの行動や発言に我慢ができなくなった、と述べている。

フォーリン・ポリシー誌が入手したメルビルの投稿はこうだ。「在外公館の職員のDNAは政策を支えるようにプログラムされており、もしこれ以上は無理だとなったら、辞任こそが名誉ある道だと教え込まれてきた。特に自分がトップの職にある場合はそうだ。6人の大統領と11人の国務長官に仕えてきたが、まさか自分がこんな状況に陥るとは思ってもみなかった」

「非の打ちどころのないプロ」も堪忍袋の緒が切れた

「大統領がEUのことを『アメリカを食い物にしている』と言ったり『NATOはNAFTAと同じくらい悪い』と言ったりするのは、事実として間違っているし、私にももう潮時だと教えてくれた」とメルビルは書いた。これは、トランプがここ数週間で同盟諸国にぶつけた侮辱の言葉を指している。

メルビルとともに仕事をしたことのある国務省関係者の中には、彼の投稿に驚いた人々もいた。彼らに言わせれば、メルビルは非の打ちどころのないプロフェッショナルで、これまでは国内政治と自分の職務の間にきちんと線を引いていたからだ。

この辞任表明は、7月中旬のNATO首脳会議を目前に行われた。NATO加盟の欧州諸国は長年、アメリカと緊密な関係を保ってきたが、首脳会議でトランプが欧州批判を繰り広げてアメリカの孤立がさらに深まるのではと恐れている。アメリカと欧州は、貿易や防衛支出、アメリカのイラン核合意からの離脱といった問題ですでに厳しく対立している。

トランプはNATO首脳会議の後、フィンランドでロシアのウラジーミル・プーチン大統領と首脳会談を行う予定だ。同盟国叩きをやった後の米ロ首脳会談という流れが、すでに冷え込んでいる米欧関係にさらに痛手となるのではと欧州諸国は懸念している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中