最高気温35度超でも「教室にエアコン不要」と言う大人へ 「夏休みでセーフ」は全くない
大人たちは、政治家も役人も会社員も、エアコンの効いた涼しい環境で仕事をしています。それでいて、子どもたちには悲惨な環境を押し付けています。教室にエアコンはいらないと言う人たちは、「教育のためだ」「身体を鍛えろ」「忍耐心、我慢する力、根性を鍛えろ」とでも言いたいのでしょうか?
特に、政治家や役人にはエアコンのない教室の授業を参観してみてほしいです。1時間と言わず、子どもたちのいる間ずっと一緒に過ごしてみてください。もちろん、晴れの日にです。だんだんと気温が上がって、3時間目4時間目になると相当大変です。これが5時間目や6時間目になると、うだるような暑さになります。ぜひ、経験してください。そうすれば、二度と「教室にエアコンはいらない」などとは言えなくなるはずです。
しかも、すでに各種メディアで報じられているように、子どもたちは次の理由で大人よりも熱中症になりやすいのです。
1. 子どもは、体重当たりの体表面積が大人と比べて大きいので、外の熱を吸収しやすい
2. 子どもは、水分をためておく筋肉の量が少ないので保水力が弱い
3. 子どもは、汗を出して体温を調整するための汗腺や自律神経が未発達
そして以下は、長く学校現場にいた私の実感ですが、
4. 子どもは人生経験が少ない分、大人より自分の体調不良に気づくのが遅い。それに気付いたとしても、適切な言葉でうまく伝えられない
「9月は大丈夫だろう」でいいのか
政治家や役人の中には、「もう夏休みに入ったからセーフ。これでエアコン設置を求める声も下火になるだろう」と思っている人がいるかもしれません。でも、それは勘違いです。
9月の残暑を甘くみてはいけないからです。私も教師として経験してきましたが、夏の疲れが蓄積したところに、9月の残暑がやってきて、そのまっただ中でエアコンのない教室で勉強するのです。思い出しただけでぞっとします。
夏は毎年必ずやってきます。来年は冷夏になるという保証はありません。先述のとおり、毎年気温は上がっており、熱中症のリスクは高まっているのです。そして、もう1つ見逃せないのが、都道府県によってエアコンの設置率がまったく違うという点です。この違いは異常なまでに大きいです。先の内田良准教授が作成したグラフを見れば一目瞭然です。
設置率が低いところは政治家や役人を動かす必要があります。そのためには、PTA、校長会、教頭会、地域の教育協議会、教職員組合などの関係団体が一致団結して取り組むことが大切です。なんといっても子どもの命にかかわる問題なのですから。
いちばん効果的なのは、やはり自治体の首長や議員に働きかけることでしょう。署名集めは常套手段です。そして、エビデンスもつけて請願書を出しましょう。エビデンスがあると説得力が高まります。気象庁のサイトで自分たちの地域の気象情報を得てください。さらには、気象庁や各地の気象台に直接問い合わせれば、もっと詳細な情報が得られるかもしれません。実際の教室の温度を測って記録するのも効果的です。
繰り返しますが、本当に、このままではずっと教室にいて熱中症になる児童が続出する可能性があります。というより、確実に出るでしょう。そうならないためには、機運が盛り上がっている今を逃さずに取りかかることが求められます。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら