出光と昭和シェル19年4月に経営統合 経営側と創業家に村上世彰が仲介

7月10日、出光興産と昭和シェル石油は、2019年4月1日に経営統合すると発表した。反対していた大株主である出光創業家の一部が取締役の推薦などを条件に同意。石油業界の大型再編は発表から3年を経てようやく実現に漕ぎ着く。写真は出光本社で5月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung Hoon)
出光興産<5019.T>と昭和シェル石油<5002.T>は10日、2019年4月1日に経営統合すると発表した。反対していた大株主である出光創業家の一部が取締役の推薦などを条件に同意。石油業界の大型再編は発表から3年を経てようやく実現に漕ぎ着く。
都内で記者会見した出光興産の月岡隆会長は「多くのステークホルダー(関係者)に大変なご心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫びする」と述べた。月岡会長によると長期にわたり途絶えていた創業家との話し合いが4月ごろから再開したという。
創業者・出光佐三氏の理念が守れなくなるとして、頑なに反対してきた創業家に対して出光興産側は条件を提示して歩み寄る姿勢を見せた。同社が公表した大株主との合意内容には、創業家側が取締役2人を推薦することや統合後も出光興産の商号を維持することなどが盛り込まている。
株主還元を強化
合意事項には株主還元策も入っており、12月に予定する臨時株主総会までに550億円を上限に自己株式を取得するほか、2019─21年度の期間の利益の50%以上を株主還元に充て、そのうち10%以上を自己株式取得に充てるとした。
出光は昨年7月、発行済み株式総数の3割にあたる大型の公募増資を実施、約1200億円を調達したしたばかり。月岡会長は、今回、統合のめどがたち、18年3月期に過去最高益をあげたことから株主還元の強化を決めたと説明した。
出光興産はすでに昭和シェルの株式を3割超保有するが、株式交換で残る株式全てを取得する。昭和シェルの時価総額は約6370億円。株式交換比率は10月に合意予定。両社はそれぞれ12月に臨時株主総会を開き、株主の承認を得る。
統合後も出光興産の商号は維持しながらも、一般的に使われる会社の名称を「出光昭和シェル」とするとして、対等な精神での合併であることを強調した。両社が展開している給油所のブランドも一定期間、併用する。
少子高齢化やエコカーの普及で国内のガソリン需要が落ち続けるなか、両社は統合での生き残りを目指してきた。その間、昨年4月にはJXホールディングスと東燃ゼネラル石油が統合、国内ガソリンシェア5割を超えるJXTGホールディングス<5020.T>が発足。出光・昭和シェルの統合で同シェア3割の会社が誕生。国内は2強体制になる。
昭和シェルの亀岡剛社長は「石油業界の環境からすれば統合は待ったなし。1歩進めるのは本当に喜ばしい」と語った。同社長は両社が持つ国内7製油所の統廃合は考えていないと述べた。