韓国の未婚の母が子を育てられない厳しい事情
(写真はイメージ) hyejin kang-iStock
<韓国の未婚の母たちが養子か遺棄かを迫られるような厳しい現状から、中絶容認を求める声が多くなっている>
韓国で「堕胎罪」廃止の論議が高まっている。政府系シンクタンク韓国女性政策研究院が2018年4月に発表した調査で、16歳から44歳の女性2006人中77.3%が堕胎罪を廃止すべきと回答し、維持すべきと答えた人でも75.7%が妊娠中絶の許可基準拡大に賛同している(聯合ニュース)。
母子保健法は、親に遺伝学的あるいは伝染性の疾患がある場合や、法律上で婚姻できない親族間で妊娠した場合、性的暴行により妊娠した場合などに限り妊娠中絶を認めている。
2010年に政府が行った実態調査によると、妊娠中絶の年間推定件数は16万9000件で、合法的な中絶は6%だった。
設備の整った病院は遵法の観点から中絶手術を断るため、安心して手術を行う病院を見つけることができずに出産を迎えるケースは多い。また未婚の母や経済的な事由で子供が育てられない母親が、出産と同時に養子に出し、あるいは遺棄する例が後を絶たない。保健福祉部が集計した2015年から17年の養子縁組は2800人で、93%が未婚の母、4%が遺棄児童だった。
望まない妊娠をした女性の子育ては難しい。経済的な事情に加えて、未婚の母子は社会的偏見から不利益を受ける。夫婦別姓を採用する父系社会の韓国では、子は父親の姓を名乗るのが一般的で、父の姓を名乗ることができない子は就職や結婚にも支障がでる。そうしたこともあり、未婚の母は中絶か、生まれた子どもを手放すことを選択せざるをえない現実がある。
2011年、入養特例法が改正されたが...
1961年に朝鮮戦争孤児を国外に養子として出すことを想定した「孤児入養特例法」が制定され、1976年には国内の養子縁組の活性化を目指す「入養特例法」(※入養=養子縁組)が制定されたが、1958年から2017年の保健福祉部が把握している国外養子は16万7千人に達している。67.2%の11万2513人が米国で、フランス、スウェーデン、フィンランドと続いている。
2011年、「孤児輸出国」の汚名を返上すべく入養特例法が改正され、翌12年8月から施行されている。母親は出産から7日間は養子の相談ができず、養子の依頼を受けた養子縁組機関は、5か月間は国内で養親を探さなければならない。5か月経っても養親を見つけられない場合のみ、国外養子が認められることとなったが、2017年に成立した養子縁組の46%は国外養子だった。
国内養子縁組は裁判所の許可制で、同法にもとづく養子縁組では従前の親子関係は断絶し、養親の実子とみなされる。
養子縁組機関は、法改正前は独自の判断でマッチングしていたが、改正後は裁判所と新たに設置された中央入養院へ提出する書類作成が義務付けられ、アフターフォローや記録の永久保存などが課せられることになった。国からの援助は国内養子縁組1件確定ごとに270万ウォン(約27万円)で、養親からの徴収はできず、国外養子が成立した際の補助金はない。