最新記事

米移民危機

米国土安全保障省に動物の死骸──移民親子引き離しで市民から反感、脅迫相次ぐ

2018年6月27日(水)16時30分
シャンタル・ダ・シルバ

夜よく眠れるな、と罵倒されたニールセン国土安全保障長官(左) Leah Millis-REUTERS

<トランプの非人道的な移民の子供の扱いが明らかになって政府職員にも脅迫が。外では政府のバッジを外して、SNSへの投稿には注意するよう警告も>

ドナルド・トランプ米政権の掲げる「ゼロ寛容」の移民政策と、それによってメキシコ国境で多くの移民の親子が引き離されてきた事態に対する反発が広がるなか、移民対策を管轄する米国土安全保障省(DHS)の職員に対する暴力的な脅迫行為が増えていることが明らかになった。

最近のある事例では、DHSの正面玄関に、頭部を切断して焼かれた動物の死骸が置かれているのを同省職員が発見したという。同省関係者が本誌に対して事実と認めた。

米政治専門メディア「ザ・ヒル」によれば、DHSのクレア・グレイディ副長官は、職員に宛てた6月23日付けの回覧メールのなかで、DHS職員の安全を脅かす脅迫行為が増えているので気をつけるよう警告したという。

ガバメント・エグゼクティブ誌が入手したメールでグレイディは次のように書いていた。「残念なことに、我々の仕事を悪意に誤解する人間や、我々の仕事を妨害することで自分たちの目的を果たそうとする人間がいる。そのために当省の職員が脅迫に直面する場合もある」

「とくに最近は、政府の移民政策に関連した脅威が一段と高まっている」とも述べた。

グレイディは職員に対し、危険を感じたら法執行機関に相談するよう指示。また、外にいるときはDHSのバッジを外し、ソーシャルメディアに投稿する場合は内容に注意するよう忠告した。

「安心して食事をする権利はない」

トランプ政権は、容赦のない移民取り締まり、とくに親から幼い子供たちを引き離して隔離した残酷さに対する激しい怒りに直面している。抗議デモや国際社会からの非難を受けてトランプは6月20日、親子は一緒に収容すると政策を転換したが、それでもアメリカ社会の怒りは収まっていない。

親子引き離し政策に終止符が打たれるわずか2日前には、キルステン・ニールセンDHS長官が、ワシントンのメキシコ料理店での食事中に数人の活動家が入ってきて罵声を浴びせた。彼らはニールセンに対して「(親子を引き離して)夜眠れるのか?」「子供たちが安心して食事できないのなら、おまえも呑気に食事をするな」などと叫んだ。

ニールセンはレストランから立ち去り、のちにツイッターにこう書き込んだ。「欠陥のある移民システムを修正し、アメリカ国境の安全を確保し、家族が一緒にいられるようになるまで、たゆまず職務に勤しむつもりだ」

DHSだけでなく、トランプ政権高官も市民の怒りに遭っている。サラ・サンダース大統領報道官は22日夜、バージニア州レキシントンのレストラン「レッド・ヘン」で食事中、店のオーナーシェフに、店にふさわしくないので退店してほしいと言われた。

スティーブン・ミラー大統領補佐官は、ワシントンのメキシコ料理店で食事中、客の1人から「ファシスト」と怒鳴りつけられた。

(翻訳:ガリレオ)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中