エルドアン大統領再選、トルコはもはや民主主義ではない
もうエルドアンにできないことはない(選挙前日の6月23日、イスタンブールに張り出されたエルドアンのポスター) Alkis Konstantinidis-REUTERS
<もともと独裁的だったエルドアンが、今より権限を拡大した大統領職に再選された。司法も行政も支配下に置き誰のチェックも届かない>
トルコ国営アナドル通信は、6月24日に投開票された同国の大統領選挙で現職のレジェップ・タイップ・エルドアンが勝利したと報道。独裁的指導者が過半数の票を獲得して再選された。
主な対立候補だった共和人民党(CHP)のムハレム・インジェ氏が正式に敗北を認めたことで、エルドアンの続投が決定。昨年4月の国民投票で僅差で承認された、大統領権限強化の新体制に移行する。
アナドル通信は開票率99%の時点で、エルドアンの得票率が53%、次点のインジェが31%と報道。インジェはこれらの結果を受けて、投票が公平に行われなかったと示唆した。投票率は87%と高水準を記録したものの、今回の選挙をめぐっては数々の不正や有権者への嫌がらせが行われた疑惑がある。それでもインジェは25日の記者会見で、公正な選挙ではなかったが結果は受け入れると語った。
エルドアンは25日早朝、首都アンカラにある与党・公正発展党(AKP)の本部から支持者に向けて誇らしげに勝利宣言。「8100万人の国民ひとりひとりが今回の選挙の勝者だ」と語り、トルコは世界に「民主主義の教訓」を与えたと称えた。さらに彼は「自らの敗北を隠すために選挙結果に疑問を呈し、民主主義に影を落とす者が出ないことを願う」とも語った。
さらなる強権体制へ
トルコでは2017年4月に、大統領の権限拡大のための憲法改正の是非を問う国民投票が実施された。賛成51%の僅差で承認された(有権者のほぼ半数は反対票を投じた)憲法改正により、今回の選挙後から大統領がこれまで以上に大きな権力を振るう新体制に移行する。
新体制の下では、議会は大統領府を中心とした制度となり、首相職は廃止されて大統領であるエルドアンが行政の長となる。また大統領は上級判事や閣僚、副大統領の任命権も持ち、大統領権限の監視を任務とする者たちを完全に支配下におさめることになる。
大統領はまた、司法制度に自由に介入できる上、非常事態令も自由に公布できる。2016年7月のクーデター未遂を受けてエルドアン大統領が発令した非常事態令は、延長を繰り返し今も解除されていない。また新たな憲法の下では、現在64歳のエルドアンが3期目を目指して2023年の大統領選に立候補する(そして2028年まで大統領の座を維持する)ことも可能だ。