養女虐待疑惑ウディ・アレンの自己弁護、『女と男の観覧車』
脚本家志望のミッキーは元女優のウエートレス、ジニーと付き合い始めるが PHOTO BY JESSICA MIGLIO (c)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC
<巨匠ウディ・アレンの新作映画は、自らの私生活上のスキャンダルを連想させるストーリーだが......>
ウディ・アレン演じる42歳のテレビ番組構成作家が17歳の女子高生と恋人同士になる――アレンが監督した79年の映画『マンハッタン』は、アカデミー賞2部門にノミネートされるなど、恋愛映画の傑作として高く評価されていた。
しかし、あるときを境に暗い影が差す。92年、アレンが同棲相手である女優ミア・ファローの養女スンイと性的関係を持っていたことが発覚した。2人の関係は、スンイが『マンハッタン』の女子高生とほぼ同じ年齢の頃に始まっていた(アレンとスンイは97年に結婚)。
14年には、アレンとファローの養女であるディランが、7歳の頃にアレンから性的虐待を受けたことを告発した。この疑惑は約20年前に一度浮上していたが、当時はほぼ黙殺され、アレンの監督生命が絶たれることはなかった。
アレンはタイム誌の力を借りて、スンイとの関係を愛の物語として印象づけることに成功した。同誌のインタビューで「感情は抑えようがない」と語っている。「ある人と巡り会い、恋に落ちずにいられなかった。要するに、そういうことだ」
男と女が出合い、恋に落ちずにいられなかったという説明は、アレンの新作『女と男の観覧車』のストーリーそのものだ。
映画の舞台は、50年代のニューヨーク。コニーアイランドの遊園地のレストランで働く人妻の元女優ジニー(ケイト・ウィンスレット)を中心にストーリーが展開する。語り手を務めるのは、海水浴場の監視員をしながら脚本家を目指すミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)だ。
ミッキーはジニーと関係を持つようになるが、やがてジニーの義理の娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)とも恋に落ちそうになる。キャロライナは、ジニーの夫が前妻との間にもうけた娘。長く音信不通だったが、ジニーと夫と幼い息子リッチーが3人で暮らしていた家に転がり込んでくる。
これは「自白」ではない
観客は、アレンをめぐるスキャンダルを思い出さずにいられない。しかもミッキーは脚本家志望で、『ハムレットとオイディプス』という研究書をいつも持ち歩いている。シェークスピアの悲劇『ハムレット』とギリシャ悲劇の『オイディプス王』は、アレンの映画でもしばしば意識されている作品だ。
物語がクライマックスに近づくにつれて、この映画とアレンの実人生の共通点がますます際立ってくる(以下、ネタバレありなので注意)。