デッドプールからセウォル号遺族までディスる韓国ネットの闇「イルベ」とは
故・盧武鉉元大統領をディスった広告をNYに掲載
ほかに多いのが、故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領を茶化した合成などだ。イルベたちは右翼傾向が強いのが特徴だ。その反対の立場だったノ・ムヒョン元大統領は彼らには格好の攻撃対象で、亡くなった今でもいたずらの象徴として使われる。今年1月25日にはニューヨークのタイムズスクエアにて野外の巨大広告にノ・ムヒョン元大統領をパロディーにした広告を流し、担当した広告代理店が謝罪する事態となった。
どの映画ポスターも非常によくできており、高画質でパッと見ただけでは本物と見分けがつかないという。前述の「暗殺」のポスターは、そのノ・ムヒョン元大統領の顔を合成したイルベ作成ポスターを、SBSの番組「一夜のTV芸能」が本物と間違って放送してしまい物議を呼び、翌日には制作陣が謝罪文を発表する騒動となった。
気に入らない映画にはレビュー点数テロ
ポスター問題だけではない。イルベたちによる映画のレビュー点数テロも大きな問題だ。2017年に韓国で公開された「軍艦島」。そして、今春日本でも公開された「タクシー運転手 約束は海を越えて」がその標的となりニュースにも取り上げられた。もともと韓国の映画ファンは口コミやネット上のレビューを参考にする人が多いが、特に大手ポータルサイト「NAVER」のレビュー点数は、映画関係者も無視出来ないほど影響力がある。
サイトでは、映画に対し1〜10点の☆の数を付けることができるが、この映画2作についてイルベたちの間で低得点をつけようという運動が広まり、一気に総合点数が下がった。特に、「タクシー運転手 約束は海を越えて」の場合は映画封切前にもかかわらず、低得点を付ける人たちが集中し、映画関係者らを困惑させた。
テレビ局もイルベに感化される始末
これまで紹介した事件はネット民たちの悪質ないたずら程度のものだったが、今回笑えない事件が発生した。公営放送局MBCのバラエティ番組「全知的おせっかい視点」にて、女性お笑い芸人イ・ヨンジャが韓国式のさつま揚げのような食べ物「オムッ(어묵)」を食べるシーンで、ギャグとしてニュース速報のパロディ風に編集された場面が映しだされたのだが、この背景として使われたのが高校生たちをはじめ300人以上の犠牲者を出した2014年の「セウォル号沈没事故」のニュース画面だったのだ。
セウォル号の事故は日本でも大きく取り上げられた惨劇だったが、時が流れ日本で報道されなくなったその後も、遺族らはデモや座り込みをして真相解明を求めていた。これに対してイルベたちは亡くなった犠牲者たちを「オムッ」と呼んで卑下し、ネット上で茶化すことが多かったが、そのことを知っている番組スタッフが意図的に編集したようだ。放送後、局側に非難が集中し緊急審議が行われ、MBC社長が謝罪し直ちに調査委員会を構成した。