苦境の中国鉄鋼業 東南アジアから新天地求めアフリカ・南米に熱視線
6月6日、中国にとって最大の鉄鋼輸出先である東南アジア向けの出荷量が2ケタの減少に沈む中、米国の新たな関税措置により一部の輸出先市場が完全に消滅する恐れが浮上している。中国・張家港の鉄鋼会社で4月撮影(2018年 ロイター/Muyu Xu)
中国にとって最大の鉄鋼輸出先である東南アジア向けの出荷量が2ケタの減少に沈む中、米国の新たな関税措置により一部の輸出先市場が完全に消滅する恐れが浮上している。苦境に立つ中国の鉄鋼メーカーは、アフリカや南米で新たな輸出先を探している。
世界最大の鉄鋼生産国であり、最大の消費国、最大の輸出国でもある中国にとって、輸出先の選択肢が狭まっている。米政府は先週、同国への主要鉄鋼輸出国であるカナダとメキシコ、欧州連合(EU)に対して大幅な輸入関税を課した。これら相手国は、対抗措置を取る構えだ。
米国が3月、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限をグローバルで発動したそもそもの目的は、中国製鉄鋼の輸入削減だ。その一部は第三国を経由して米国に輸入されていると米製鉄会社は主張している。
米商務省は先週、ベトナムから輸入される一部鉄鋼製品が中国産だとして、重い輸入関税措置を発表。ベトナムは、中国にとり韓国に次ぐ2番目に大きい鉄鋼輸出先であり、ベトナムに倉庫を持つ中国の製鉄会社にとって主要な販売先だ。
米国向け輸出品が懲罰関税の対象となる事態を避けるため、ベトナムは国内鉄鋼企業が、中国からの製鉄購入をやめる可能性があると指摘されている。
「中国メーカーの輸出機会がますます限定されつつあることが、一層明らかになっている。これは世界各地で導入された既存の通商法制の影響だ」と語るのは英国の鉄鋼コンサルタント会社MEPSインターナショナルの クリス・ジャクソン氏。
中国の鉄鋼輸出は4月、過去8カ月で最高の水準に達したが、今年1─4月の出荷量は2割下落した。ただ金額ベースでは2・5%の下落にとどまっている。
最大の輸出先であるベトナムや韓国向けが昨年以降2ケタの勢いで減少。ロシアなど他の輸出国との競争激化を反映している。
タイやベトナム、インドネシアやマレーシアなど東南アジアの輸入国が、中国製鉄鋼に反ダンピング税を課したことも、中国の輸出を減退させている。