最新記事

インド

東南アジアで地歩固めるインド 中国けん制で各国と連携強化へ

2018年6月8日(金)18時00分

中国の冷視線

米国やオーストラリア、インドや日本の外交・安全保障関係者の間では近年、「インド太平洋」という表現が頻繁に使われるようになっている。これは、民主主義国を中心としたより広範な地域を指す表現で、一部で「中国中心」過ぎるという指摘が出ている「アジア太平洋」に代わって使われている。

地域でより重みを増すインドの重要性を追認する形で、米軍は5月30日に開かれた式典で、ハワイを拠点とする太平洋軍の名称を正式に「インド太平洋軍」に変更した。

対外的な中印友好関係のデモンストレーションや、強固な両国関係についてのモディ氏の発言とは裏腹に、中国政府は同氏の戦略に明らかに冷淡な反応を示している。

中国の共産党機関紙・人民日報系の環球時報は先週の論説で、「もしインドが戦略的に重要なサバン島への軍事的アクセスを求めるなら、誤って中国との戦略的競争にはまりこみ、いずれ痛い目に遭うだろう」と警告した。

シャングリラ対話に出席した中国人民解放軍軍事科学研究院のZhao Xiaozhou研究員は、記者団に対し、モディ氏が「自らがインド太平洋と考えるコンセプトについて、いくつか熱心な発言をした」と述べた。

同研究員は詳細に言及しなかったが、環球時報は、「インド太平洋戦略と、米国と日本、インドとオーストラリアの同盟もどきは、長くは続かない」とする同研究員の発言を引用した。

より広範な足跡

インド外務省当局者は、マラッカ海峡へのアクセスを確保しようとうする政府の取り組みには、自国の国益の要素が多分にあると話す。同国の貿易の60%が、同海峡を通過するからだ。

だがインドが考える自国の行動範囲は、より広い。

5月末には、南シナ海でインド艦船3隻がベトナム海軍と初の軍事演習を行った。中国は、南シナ海のほぼ全域で自国の領有権を主張している。

ベトナムの潜水艦は、インドで訓練を行っている。また両国は、情報共有の範囲を大きく拡大させたほか、高度な兵器の売却についても検討している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中