最新記事

環境保護

観光収入より環境保護を選んだタイ マヤビーチ閉鎖に見る東南アジアの苦悩

2018年6月3日(日)13時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インド洋大津波の被害も



ピピレ島のマヤビーチ閉鎖について伝えるタイのニュース Thai PBS News / YouTube

2004年にはスマトラ沖で発生したスマトラ沖地震によるインド洋大津波でプーケットと並んでピピドン島も大きな被害を受けた。特にトンサイ湾とロ・ダラム湾に挟まれたホテルや飲食店が密集する地区を中心に津波の被害を受け、約2000人が同島だけで死亡・行方不明になっている。

しかし観光産業が主産業であることから津波被害からの復興も早く、再び多くの観光客が押し寄せる活況を呈していた。

タイ政府天然資源環境省の国立公園野生動物局では、マヤビーチの閉鎖期間中に破壊されたり荒れたりした海底のサンゴ、海洋生物の回復に専念するとしている。

6月1日には当局がマヤビーチのある湾内などに長いブイを設置。ボートなどが不法にビーチに侵入できない措置が講じられた。

タイ政府では9月末日までの閉鎖期間終了後は、新たにピピレ島への観光客の流入制限を実施する方針を示している。1日約2000人に限定し、登録もe-ticket(電子入域証)のような事前登録制度の導入も検討しているという。

フィリピン・ボラカイ島も閉鎖

観光客による環境破壊が原因で観光地を一時的に閉鎖する例はフィリピンでも起きている。フィリピン中部シブヤン海の小島ボラカイ島は今年4月26日にドゥテルテ大統領の指示で観光客の立ち入りを最大で6カ月間禁止する措置に踏み切った。

同島の海岸沿いには違法建築の宿泊施設を含め多くのホテルが林立、排水設備の整備が追い付かず下水などが直接海に排水として流されていた結果海洋汚染が深刻化していた。

ドゥテルテ大統領は2月にボラカイ島を「まるで汚水溜めの様だ」と酷評、対応策を至急講じる必要性を明らかにしていた。ボラカイ島には空港のある隣のパナイ島から海路で渡るしか方法がないため、パナイ島沿岸地区には検問所が設けられ観光客の不法侵入に目を光らせている。

その一方で当局による違法建築物の撤去と排水設備の整備が現在進められており、その進捗状況では閉鎖期間の短縮もありうるとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日産とホンダ、持ち株会社設立へ協議 三菱自も参加の

ワールド

ゴーン元日産会長が23日に外国特派員協会で会見、逃

ワールド

米議会、対中投資制限法案を近く採決 通信機器や不動

ワールド

90年ぶり大嵐、インド洋マヨット島10万人と連絡つ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 2
    揺るぎない「価値観」を柱に、100年先を見据えた企業へ。
  • 3
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが物議...事後の悲しい姿に、「一種の自傷行為」の声
  • 4
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 5
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 6
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 7
    爆発と炎上、止まらぬドローン攻撃...ウクライナの標…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    ウクライナ侵攻によるロシア兵の死者は11万5000〜16…
  • 10
    ChatGPT開発元の「著作権問題」を内部告発...元研究…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 3
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 4
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 5
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 6
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 9
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 6
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中