最新記事

欧州経済

イタリア、銀行再生に暗雲 政局混乱が生むリスク

2018年6月2日(土)13時24分

5月29日、イタリアの政治危機が、銀行業界の再生努力に長い影を落としている。写真はローマで建設中の商業・金融街。26日撮影(2018年 ロイター/Stefano Rellandini)

イタリア政治の迷走が、銀行業界にも長い影を落としている。多年にわたる国内銀行の再建努力を水泡に帰し、資産価値を損ない、資金アクセスを困難にして、さらにユーロ離脱懸念が再燃する恐れがあるためだ。

単一通貨ユーロに対する疑念が復活したことで、イタリア債券市場は冷え込んでおり、2011─12年の債務危機においてイタリアの銀行セクターを震撼させた資本逃避リスクが再浮上している。

その結果、イタリア金融機関の株式時価総額は29日までのわずか2週間で5分の1以上も減少した。既成政治に反発する反主流派政党による連立政権の樹立を巡る混乱を受けた債券安に追随する格好だ。

今回の政局混迷に陥る以前は、イタリア各行は、経営を脅かす要因となっていた不良債権の削減を進めつつ、他のユーロ加盟国の銀行を上回る業績をあげていた。

景気回復軌道にある欧州で、イタリアの経済復活を好感したヘッジファンドは、同国の中堅金融機関に資金を注ぎ込む動きさえあった。

だが、イタリアのマッタレッラ大統領が21日、連立政権の経済相候補とされたユーロ懐疑派の指名を拒否したことで、再選挙の展望が一時強まった。この選挙がユーロの是非を問う事実上の国民投票となり、反主流派政党がさらに躍進するとの懸念から、株や債券売りが加速した。

「投資家の認識するリスクは急激に高まっている。それが、今回の混乱以前でさえ(一株あたり)純資産を下回っていたイタリアの銀行株価がさらに落ち込んでいる理由だ」とかたるのは、ミラノのボッコーニ大学教授で、銀行監督問題に関する欧州議会アドバイザーを務めるアンドレア・レスティ氏だ。

イタリア公的部門の累積債務は世界第3位の2.3兆ユーロ(約288兆5000億円)に達しており、銀行への直接的脅威となっている。イタリア長期金利が4年ぶりの高水準となる中で、銀行が保有する3520億ユーロ規模の国内債券に大きな損失が生じるからだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中