イタリア、銀行再生に暗雲 政局混乱が生むリスク
5月29日、イタリアの政治危機が、銀行業界の再生努力に長い影を落としている。写真はローマで建設中の商業・金融街。26日撮影(2018年 ロイター/Stefano Rellandini)
イタリア政治の迷走が、銀行業界にも長い影を落としている。多年にわたる国内銀行の再建努力を水泡に帰し、資産価値を損ない、資金アクセスを困難にして、さらにユーロ離脱懸念が再燃する恐れがあるためだ。
単一通貨ユーロに対する疑念が復活したことで、イタリア債券市場は冷え込んでおり、2011─12年の債務危機においてイタリアの銀行セクターを震撼させた資本逃避リスクが再浮上している。
その結果、イタリア金融機関の株式時価総額は29日までのわずか2週間で5分の1以上も減少した。既成政治に反発する反主流派政党による連立政権の樹立を巡る混乱を受けた債券安に追随する格好だ。
今回の政局混迷に陥る以前は、イタリア各行は、経営を脅かす要因となっていた不良債権の削減を進めつつ、他のユーロ加盟国の銀行を上回る業績をあげていた。
景気回復軌道にある欧州で、イタリアの経済復活を好感したヘッジファンドは、同国の中堅金融機関に資金を注ぎ込む動きさえあった。
だが、イタリアのマッタレッラ大統領が21日、連立政権の経済相候補とされたユーロ懐疑派の指名を拒否したことで、再選挙の展望が一時強まった。この選挙がユーロの是非を問う事実上の国民投票となり、反主流派政党がさらに躍進するとの懸念から、株や債券売りが加速した。
「投資家の認識するリスクは急激に高まっている。それが、今回の混乱以前でさえ(一株あたり)純資産を下回っていたイタリアの銀行株価がさらに落ち込んでいる理由だ」とかたるのは、ミラノのボッコーニ大学教授で、銀行監督問題に関する欧州議会アドバイザーを務めるアンドレア・レスティ氏だ。
イタリア公的部門の累積債務は世界第3位の2.3兆ユーロ(約288兆5000億円)に達しており、銀行への直接的脅威となっている。イタリア長期金利が4年ぶりの高水準となる中で、銀行が保有する3520億ユーロ規模の国内債券に大きな損失が生じるからだ。