G7でのトランプ「口撃」に当惑 カナダに有効な手はあるか
8日カナダのシャルルボアのG7会場であいさつするトランプ米大統領(左)とトルドー首相(2018年 ロイター/Leah Millis)
トランプ米大統領が通商問題でカナダのトルドー首相に対して猛烈な批判を浴びせ、両国の関係は過去数十年で最悪の状況に陥った。カナダとしては、米国との貿易戦争回避に向けた有効な対応策はかなり乏しくなりつつある。
トランプ氏は、カナダで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)におけるトルドー氏の態度について「非常に不誠実かつ軟弱」とやり玉に挙げた上で、自動車輸入に関税を課す意向を示唆。この関税が導入されれば、カナダ経済は危機に陥りかねない。
カナダ政府は、トランプ氏の大統領就任以来ずっと米国で政策担当者や企業首脳とのつながりを深めて国益を守ることに努力してきただけに、トランプ氏の予想外かつ異例の「口撃」には当惑を隠せないでいる。事情に詳しい関係者の話では、これまでの米国への働きかけが期待したほど実を結んでいない点への失望感も出ているという。
同国政府は、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復措置を講じると約束しているとはいえ、経済規模が10倍に達する上に主な輸出先でもある米国を相手に貿易戦争を展開しても勝ち目は極めて薄い。ちなみに国別の米国向け鉄鋼輸出でカナダは第1位だ。
あるカナダ政府当局者は「国内で実行できることは限られる。トランプ氏を説得して輸入制限を止められる人々は米国にしかいないが、彼らが最大勢力になっているわけでもない」と嘆いた。
カナダ政府としては、ホワイトハウス外部の同国に同情してくれそうな議員への働きかけをさらに強める意向のほか、同盟国との連携強化に頼ったり、トランプ氏が口にした貿易政策のすべてを実行しないと期待するしかないことが、打つ手の少なさを物語っている。
オタワ大学のパトリック・レブロンド教授(国際問題)は、カナダの選択肢は限定的で「魔法のような『プランB』」は存在しないという意味だと指摘した。
<楽観材料も>
トランプ氏や同氏の側近は、トルドー氏がG7サミット後の会見でカナダは米国の言いなりにならないと述べたことに強く反発した。ところがトルドー氏は、以前にも数回この種の発言をしている。