すっかり落ちぶれてしまったロシアの宇宙開発、ようやく再生の兆し
資金不足から始まった崩壊
なぜ、ロシアの宇宙開発は崩壊したのだろうか。
その発端は、ロシアの資金不足にある。ロシア誕生後、エリツィン大統領は経済の立て直しに奔走したもののうまくいかなかったことは広く知られているが、宇宙予算もそのあおりを食って大幅に削減された。これにより、新たな宇宙計画は軒並み、中止や凍結、遅延の憂き目にあった。
なんとか継続された計画も、やはり予算不足から十分な開発や試験を行うことができず、それが火星探査機や衛星の失敗を引き起こした。
さらに、新しいロケットや衛星が造れないことで、熟練の技術者による新人の育成や技術の伝承が行えず、技術者の世代交代に失敗した。現在、技術者の約半数が50歳以上、30歳以下の若手は5分の1ほどで、平均年齢は50歳前後。さらにはソ連の宇宙開発の黎明期から携わる、70歳近い技術者もいまだ現役だという。
その結果、新しくものを造る技術はもちろん、これまで造り続けてきた古いロケットや衛星を、正しく造り続ける技術も失われ、これまで安定して運用できていたロケットも、打ち上げに失敗するようになったのである。
再生に向けた試み
もちろん、ロゴージン副首相はこうした状況を黙って見ていたわけではなく、ロシアの宇宙機関「ロスコスモス」や国営企業のトップの交代に始まり、ロケットや衛星を開発する国営企業の統廃合、さらにはロスコスモスの国営企業化など、いくつもの改革を実行した。
さらに、ロシア極東の新しいロケット発射場の建設が遅れ、賄賂や手抜き工事も横行していると聞くや否や、自ら現地に乗り込み、責任者を叱責したり、労働者を励ましたりなどのパフォーマンスも実施。また"ツイッター廃人"として知られる同氏らしく、米国の宇宙開発を非難する言動も繰り返した。
しかし、その成果は出ず、ロケットや衛星の失敗を減らすことにはつながらなかった。
そのロゴージン氏に代わって、新たに宇宙分野を担当することになったボリーソフ副首相は、ソヴィエト陸軍出身の元軍人で、前国防次官でもある。はたして宇宙産業を再生することができるのか、その手腕に注目が集まる。