もはや瀕死のWTO裁定機能 トランプがすべての裁判官指名に拒否権発動
パワー・クラブ
米国が中国を「市場経済」として扱っていないと中国政府が訴えた案件では、米国自体も勝手にルールを書き換えたと批判されている。
「WTOは本当に、ルールに基づく組織なのか。それとも、古参の大国がルールを曲げることができるクラブなのか」。最近行われた紛争のヒヤリングで中国側はそう詰め寄った。
トランプ大統領は、地球温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」やイラン核合意など、自分が嫌いな合意から撤退する傾向があるが、WTO外交官の多くは、シア大使が今後、紛争解決手続きを順守する提案を行うとの楽観的な見通しを示した。
これまでのところ、上級委員会の裁判官任命に対して米国が発動した拒否権を撤回するよう求める署名には、WTO加盟国の62カ国が賛同している。だが紛争処理の崩壊をどう回避するかについては、何の合意もできていない。
一部の加盟国は、他の調停手段の利用や、米国を除外した紛争解決手続きの導入を議論していると、法律関係者や外交官は話す。
だが、米国の同盟国である日本は、署名には参加しない意向だ。
伊原純一大使は、WTO加盟国は「本来政治的な」紛争からは距離を置くべきだと話す。日本は米国抜きの紛争解決手続きを拒否している。
「私見では、『プランB(代替策)』は存在しない。われわれはプランAしか持たない。解決策を見出すためには、もっと集団的な努力が必要だ」と、伊原大使は話した。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[ジュネーブ 18日 ロイター]
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