アマゾンが売り込む「監視社会」、顔認証技術を警察に提供
毎日の写真投稿3億5000万点
アマゾンはまた、警官が装着するボディカメラとリコグニションを統合する利用方法を推奨している。それにより、例えば路上で交通違反を取り締まるときなども、データベースと照合して被疑者に犯罪歴がないかチェックできるという。
警察は顔認識システムを何年も前から使っているが、これまでは比較的小規模なテクノロジー企業の開発したツールを採用してきた。それでもFBIの顔認識データベースは4億点を上回る画像にアクセスできると言われている。ジョージタウン大学法学部大学院の研究チームの調査によると、アメリカの成人の約半数は、警察の顔認識データベースに少なくとも1点は写真が入っているという。米国土安全保障省は不法滞在者を検挙するため、一部の空港で顔認証ソフトを使用している。
だが、膨大なユーザー情報を持つアマゾンがこの分野に進出したことで、同じ強みを持つ大企業の参入が相次ぐ可能性がある。フェイスブックの月間ユーザーは20億人を突破し、投稿写真は1日に3億5000万点を超える。同社は「史上最大の顔画像データベース」を持ち、ディープラーニング(深層学習)機能を生かした顔認識ソフト、「ディープフェイス」で写真のタグ付けなどを自動化するサービスを提供してきた。
だが、この機能はプライバシー侵害につながるとして訴訟が起き、フェイスブックは米連邦取引委員会(FTC)の要請に応じ、ユーザーの「明確な同意」がない限り、顔認識ソフトの使用を控えることにした。ただし、この取決めは2021年までの期限付きだ。
後ろ姿でも個人を特定
フェイスブックは引き続き新技術の開発を進め、顔を隠したり後ろを向いていても、髪や体型、服、姿勢などで個人を特定できるソフトなどの実用化を目指している。2017年にはスマートフォンのカメラなどから取得した表情データを基に、ユーザーの気分に合った広告を表示できる技術で特許を取得した。
アマゾンは声明で、同社は法律を順守し、責任を持って技術を利用するよう顧客に求めていると弁解した。しかし法律を守った利用なら問題がないとは限らない。例えば、リコグニションを使って入国管理局の捜査官が不法滞在者を見つけて家族と引き離すことや、警察官がデモ参加者を監視することは、人権を脅かすことにならないだろうか。
警察に監視システムを売り込むまでもなく、アマゾンは多額の収益を上げている。ジェフ・ベゾスCEOは世界一の大富豪だ。監視社会に加担すれば一般ユーザーの反感を買いかねないが、強気のアマゾンは人権団体の批判に耳を貸しそうにない。
© 2018, Slate
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