ナジブ前首相が汚職調査機関に出頭 出国禁止、家宅捜索と狭まる包囲網
疑惑追及も急展開の様相
ナジブ前首相がMACCに出頭し事情聴取を受けている同時刻、クアラルンプール近郊のプタリンジャヤにあるMACC本部では、MACCのシュクリ・アブドゥール新委員長が初の記者会見に臨んでいた。シュクリ委員長は以前、MACCの副委員長として1MDBの関連会社「SRC」の不正事件や、ナジブ前首相の個人口座への多額の献金疑惑の捜査指揮を執っていたが、2016年に引退に追い込まれていた。マハティール首相は1MDBなどの汚職疑惑解明という公約を果たすために現職のMACC委員長を解任して、シュクリ氏を21日に新委員長に任命したのだ。
会見でシュクリ委員長は「これまで命にかかわるような脅迫を受け、疑惑の証人は姿を消すようなことが起きた。しかしマレーシアを守るために不正資金は返却されるべきであると考える」として疑惑解明に誠心誠意取り組む姿勢を強調した。
その上で「今日のナジブ前首相への出頭要請は逮捕のためではなく、疑惑に対する供述を得るためである。前首相への敬意を払いながら法の定めに従って捜査したい」と決意を示した。
ナジブ前首相の家宅捜査についてマハティール首相は「警察の判断だろう」としているが、前首相への疑惑解明だけにマハティール首相の暗黙の了解あるいは直接的指示があるのは間違いない。ナジブ夫妻の逮捕も視野にいれた疑惑解明は急ピッチで進んでいる。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など