インドで相次ぐ性的暴行事件 誰も語らない「少年被害」
家父長制の弊害
性的虐待の被害者に対してカウンセリングを行うソーシャルワーカーによれば、家父長制が根強く残るインド社会では、女子が男子に比べて多くの制約の下で育てられ、屋外で過ごす時間も短いため、男子児童の方が標的になりやすいと指摘する。
インド西部都市プネーに住む22歳の男性は、5歳のころから2年にわたり、ある男から繰り返しレイプされていたが、このことをどう受け止められるか不安だったため、この悲惨な体験を両親に打ち明けられるようになったのは、たった1年前のことだと語る。
「その男にレイプされていた公園に私は通い続けた」と、ダリワラ氏の財団でカウンセリングを受けていたこの若者は語った。「私はその男が怖かったが、家にいて怠けていると親の目に映ることが嫌だった。母を怒らせたくなかった」
ロイターは、彼が語った詳細を裏付けることができなかった。
いずれは心理的なトラウマを克服するだろうという希望的な観測から、親が息子が受けた虐待被害を報告することに躊躇を覚える場合が多いと、一部の専門家は語る。
前述したプネーの若者は、両親から「前を向いて、この事件に人生を決めさせてはいけない」と言われたと語る。両親にとってもデリケートな話なので、詳細な連絡先はすぐには教えてもらえなかった。
被害をなかなか口にできないこうした状況については、「インディアン・ジャーナル・オブ・サイキアトリー」が昨年掲載した論文がそれを鮮明に描き出している。
レイプ被害を受けた9歳の息子が心理学的治療を受けることに抵抗する父親が漏らした発言を、この論文はこのように引用している。「息子は処女膜を失ったわけでも、妊娠したわけでもない。女々しさを捨て、男らしく振る舞うべきだ」
この論文の共著者であり、バンガロールの病院で上級精神科医を務めるビージャヤンティ・K・S・スブラマニヤン医師は、少年時代に性的暴行を受けたにもかかわらず被害を警察にまったく通報しなかった成人男性を少なくとも8人診察したという。
「少年は被害者のイメージに合わない。家父長制を重んじる社会の下で、彼らは冷静に対処することを期待されている」と同医師は語る。「少年が成長すれば強くなる、だから心理学的治療は必要ない、と人々は考えている。まったく馬鹿げた話だ」