最新記事

セクハラ

インドで相次ぐ性的暴行事件 誰も語らない「少年被害」

2018年5月21日(月)18時20分


敵意と嘲笑

一般的に警察は、少年に対する暴行事件を扱う場合、配慮が足りない傾向があると、児童に対する性的虐待を問題提起する財団を運営するインシア・ダリワラ氏は語る。

「性的虐待を受けた経験のある成人男性やソーシャルワーカーによれば、少年が性的虐待を受けたと思われる場合、警察が(被害者に対して)敵意を抱いたり、嘲笑したり、さらには(証言を)信用しない傾向があると言われている」とダリワラ氏は語る。

「男性の性的虐待被害者に対して、最もありがちな認識は、『彼らの側でも楽しんでいたのではないか』というものだ」

今回の少年レイプ事件を捜査するムンバイ警察は、男女双方の児童に対する性的虐待の対応について、捜査員らが定期的な研修を受けていると説明している。

また、政府側も警察向けにすべての児童対象のワークショップを開催している、と政府に児童政策について勧告する児童権利保護全国委員会を率いるストゥティ・カッカー氏は説明する。

だが、児童の安全向上に取り組む活動家たちによれば、ニューデリーで2012年に起きた陰惨な集団レイプで若い女性が死亡した事件への怒りを契機として、インドでは女性への性的暴力に対する認識は改善されたものの、男性が被害者の場合、関心ははるかに薄いという。

インド女性児童開発省が2007年、家庭や学校の児童に加えて、労働や路上生活をする児童など計1万2447人を対象に行った調査によれば、半分以上の児童が性的虐待を受けた経験があると回答。被害者の53%は男子だった。首都デリーに限れば、その比率は6割に達する。

その後、同様の調査は行われていないが、一部の活動家や警察は、少年に対する性的虐待の多くが、同性愛につきまとう社会的な恥辱のため、通報されないままだと指摘する。

女性児童開発省は3月、国会への報告で、2016年に少なくとも3万6321件に上る性的虐待が通報されているが、そのうち男子児童が被害を受けたという訴えは467件にとどまっていると述べている。

通報件数自体は少ないにもかかわらず、インド政府は先月、少年に対する性的暴行に焦点を絞った調査実施を命じた。

「子どものころに性的虐待を受けた少年は、性的被害を受けた男性が抱える不名誉さや屈辱ゆえに、生涯を通じて沈黙を保っている」とガンジー女性児童開発相は声明で語った。「これは深刻な問題であり、対処する必要がある」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中