インドで相次ぐ性的暴行事件 誰も語らない「少年被害」
敵意と嘲笑
一般的に警察は、少年に対する暴行事件を扱う場合、配慮が足りない傾向があると、児童に対する性的虐待を問題提起する財団を運営するインシア・ダリワラ氏は語る。
「性的虐待を受けた経験のある成人男性やソーシャルワーカーによれば、少年が性的虐待を受けたと思われる場合、警察が(被害者に対して)敵意を抱いたり、嘲笑したり、さらには(証言を)信用しない傾向があると言われている」とダリワラ氏は語る。
「男性の性的虐待被害者に対して、最もありがちな認識は、『彼らの側でも楽しんでいたのではないか』というものだ」
今回の少年レイプ事件を捜査するムンバイ警察は、男女双方の児童に対する性的虐待の対応について、捜査員らが定期的な研修を受けていると説明している。
また、政府側も警察向けにすべての児童対象のワークショップを開催している、と政府に児童政策について勧告する児童権利保護全国委員会を率いるストゥティ・カッカー氏は説明する。
だが、児童の安全向上に取り組む活動家たちによれば、ニューデリーで2012年に起きた陰惨な集団レイプで若い女性が死亡した事件への怒りを契機として、インドでは女性への性的暴力に対する認識は改善されたものの、男性が被害者の場合、関心ははるかに薄いという。
インド女性児童開発省が2007年、家庭や学校の児童に加えて、労働や路上生活をする児童など計1万2447人を対象に行った調査によれば、半分以上の児童が性的虐待を受けた経験があると回答。被害者の53%は男子だった。首都デリーに限れば、その比率は6割に達する。
その後、同様の調査は行われていないが、一部の活動家や警察は、少年に対する性的虐待の多くが、同性愛につきまとう社会的な恥辱のため、通報されないままだと指摘する。
女性児童開発省は3月、国会への報告で、2016年に少なくとも3万6321件に上る性的虐待が通報されているが、そのうち男子児童が被害を受けたという訴えは467件にとどまっていると述べている。
通報件数自体は少ないにもかかわらず、インド政府は先月、少年に対する性的暴行に焦点を絞った調査実施を命じた。
「子どものころに性的虐待を受けた少年は、性的被害を受けた男性が抱える不名誉さや屈辱ゆえに、生涯を通じて沈黙を保っている」とガンジー女性児童開発相は声明で語った。「これは深刻な問題であり、対処する必要がある」