イスラム教徒に豚とアルコールを強要する中国・ウイグル「絶望」収容所
ゼンスは、中国政府が2017年3月から拘束者数を急増させたと言い、収容所の建設に向けた73件の政府プロジェクトに1億ドル以上が投じられた証拠も提示した。陳全国・前チベット自治区党委員会書記は、2016年8月に新疆ウイグル自治区トップに就任した後、チベット自治区とよく似た「漢化政策」の陣頭指揮をとった。
中国政府がターゲットにしているのは、新疆のイスラム過激派だ。彼らは国家安全保障上の脅威で、中国各地の都市でテロ攻撃を繰り返しているからだという。その標的が、新疆ではイスラム教徒で多数派のウイグル族だ。「中国政府が言う『テロとの戦い』は、宗教や言語、民族的アイデンティティを封じ込める戦いへ変貌している」、とゼンスは報告書で述べた。
宗教に警戒
イスラム教徒だというだけで、当局は疑いの目を向ける。顔全体を覆うベールを着用したり、男性が長いひげを伸ばしたり、子どもにムスリム特有の名前を付けたりするのを禁止することで、中国政府はイスラム教徒のアイデンティティを踏み潰しにかかった。
彼らに共産主義思想を吹き込み、逆に分離独立主義を抑え込む目的で、新疆の住民世帯にわざわざ政府職員を派遣することもある。
習が「外国的」とみなすイスラム教やキリスト教のような宗教は、習政権が漢化と「社会主義的な革新的価値観」の体現を目指すなかで一層の圧力にさらされている。しかも新疆は、中国政府が数十億ドルの資金を投じる「一路一帯」構想の重要拠点とされているため、弾圧は容易に止みそうにない。
新疆は中国政府が保有する最先端の監視技術の実験場にもなっている、とゼンスは指摘した。そこで得た成果は、中国全土における「社会改造」に応用される可能性がある。
(翻訳:河原里香)