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北朝鮮の首都・平壌が「薬物中毒・性びん乱」で汚染の危機

2018年5月18日(金)16時30分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

金正恩は違法薬物の乱用を抑えるために秘密警察などを動員して努力してきたが KCNA-REUTERS

<北朝鮮では違法薬物の製造・密売は重罪だが、その対応でも追い付かないほど平壌の薬物汚染は深刻なのかもしれない>

北朝鮮の首都・平壌が、地方の保安署(警察署)幹部が密造していた覚せい剤で汚染されていたことがわかった。

中高生まで覚せい剤で「性びん乱」

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し平安南道(ピョンアンナムド)の消息筋が語ったところでは、「最近、道内の殷山(ウンサン)郡にある保安署の40代の監察課指導員が、覚せい剤を製造して密売した疑いで朝鮮労働党から追放され、処罰された。彼は保安署幹部の身分を隠れ蓑に、数年にわたり密売を続けてきたが、国家保衛省(秘密警察)と人民保安省(警察庁)が合同で行う非社会主義行為の取り締まりに引っかかった」という。

この幹部は薬物製造の技術者を雇い、自宅を密造拠点に改造。平壌市郊外にある大規模マーケット、平城(ピョンソン)市場の商人を通じて平壌に覚せい剤を流していた。今年3月、覚せい剤500グラムを商人に卸したことが、当局に察知されたもようだ。

一度に覚せい剤500グラムとは、かなりの量と言えるだろう。それも数年にわたり、継続的に密売されていたとすれば、平壌を汚染した覚せい剤の量がいったいどれくらいになるのか、想像もつかない。

韓国紙・中央日報は昨年4月、北朝鮮当局は平壌の人口約260万人のうち、60万人余りを地方に強制移住させることを計画していると報じた。

同紙によれば、強制移住の対象となるのは◆脱北者や行方不明者の家族◆政治犯収容所の収監者の親戚◆違法薬物および偽造紙幣に関わった犯罪者◆韓流ドラマのDVDの製造・密売など体制の安定を脅かす犯罪に関わった犯罪者――だという。

北朝鮮では、覚せい剤などの違法薬物や、韓流ドラマのDVDを製造・密売する行為は重罪であり、平壌から強制移住させられる以前に、教化所(刑務所)や管理所(政治犯収容所)送りになるのが普通だ。

しかし、そういったケース毎の対応では追い付かないほど、平壌の薬物汚染は深刻なのかもしれない。

正恩氏は、違法薬物の乱用と韓流ドラマの拡散を押しとどめるべく、秘密警察などを動員して様々な努力を重ねてきたが、ほとんど成果は出ていないように見える。

参考記事:コンドーム着用はゼロ...「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

すでに地方都市では、中高生までが覚せい剤でキメた上での「性びん乱」に走るなど、社会の退廃に歯止めがかからない状況となっている。

こうした問題を放置すれば、退廃の波が平壌にまで及び、収拾がつかない事態ともなりかねない。

参考記事: 北朝鮮で少年少女の「薬物中毒」「性びん乱」の大スキャンダル

高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
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