最新記事

海外旅行

テロの時代に安全な海外旅行を楽しむために

2018年5月15日(火)16時00分
ローリー・ペニントングレイ(フロリダ大学観光危機管理イニシアチブ・ディレクター)

2015年11月にパリで起きた同時多発テロで、首謀者がブリュッセル出身者であることが発覚すると、瞬く間に「ブリュッセルはテロリスト予備軍がいる危険な町」というイメージが広がってしまった。そこでブリュッセル市観光局は2016年1月、「#コールブリュッセル(ブリュッセルに電話しよう)」というキャンペーンを開始した。

旅行前に入手したいアプリは

これは市内の観光名所に黄色い電話を設置して、そこに世界中の人たちから電話をかけてもらおうというもの。電話を取るのは、通り掛かりの住民や、既にブリュッセルにいる観光客だ。彼らに「ブリュッセルは危険じゃないよ」というリアルな情報を伝えてもらうことで、旅行を検討している人たちの不安を払拭しようというわけだ。

楽しい仕掛けのおかげで、5日間で世界154カ国から1万2000本以上の電話がかかるなど、キャンペーンは大成功を収めた。その2カ月後、ブリュッセルの空港と地下鉄駅で爆弾テロが起きて、キャンペーンの成果は台無しになってしまったが、観光地の情報発信という意味では素晴らしいキャンペーンだった。

今や「安全な町」というイメージづくりだけでなく、万が一のときのための備えがあることを日頃からアピールすることが重要だ。それは安心して訪れられる町という信頼を高めることになるし、有事のときに旅行者を誘導しやすくもなるだろう。

もちろんそのためには、旅行者側が積極的な安全対策を取っていることが大前提だ。そこでおすすめの対策をいくつか紹介しておこう。

まず、基本中の基本は旅行先の危険レベルを調べること。リスクマネジメント会社エーオンが作成しているリスクマップなどが参考になるだろう。また、旅行前も旅行中も旅先の自治体・国のツイッターやフェイスブックをチェックすること。公式アカウントから最新情報を入手できるようにしておこう。

スマートフォンアプリ「ファイアチャット」も入手しておきたい。このアプリがあれば、携帯電話回線やWi-Fiがない場所でも、近くにいるユーザーとメッセージをやりとりできる。一緒に旅行する全員がこのアプリをインストールしておけば安心だ。フェイスブックを使っている人なら、「セーフティチェック(災害時安否確認機能)」で、家族や友達に自分の安否を素早く知らせることができる。

観光地はこれまで以上にテロが起きやすくなっているから、旅行者が自分の安全を守るツールを複数確保しておくことが重要だ。もちろんテロでなくても、旅に予想外の事態は付き物。いざというとき慌てないためにも、情報収集を怠らないようにしよう。

<本誌2018年5月1&8日号「特集:テロ時代の海外旅行」>

20250128issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月28日号(1月21日発売)は「トランプの頭の中」特集。いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中古住宅販売、24年12月は2.2%増の424万

ワールド

ロ大統領、トランプ氏との会談に意欲 ウクライナや原

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感1月確報値は71.1、6カ

ワールド

米中外相が電話会談、両国関係や台湾巡り協議 新政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄道網が次々と「再国有化」されている
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    電気ショックの餌食に...作戦拒否のロシア兵をテーザ…
  • 6
    早くも困難に直面...トランプ新大統領が就任初日に果…
  • 7
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 8
    「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、…
  • 9
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 10
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 7
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 8
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 9
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中