朝鮮半島「統一」の経済的恩恵は大きい、ただし......
北朝鮮の手本は中国とベトナム
英経済調査会社キャピタルエコノミクスのアジア担当エコノミストのギャレス・レザーは、平和の見通しが、直ちに韓国経済を浮揚させるという期待に警鐘を鳴らす。画期的な南北首脳会談は、「この地域の市場と経済にとって、大きなリスクを取り除く助けになるだろう。しかし韓国経済に与える影響はそれほど大きくない」と、4月末のリポートで書いている。
何しろ実際の平和条約締結までにクリアしなければならない問題は多い。それに、これまでにも多くの南北合意が北朝鮮によってほごにされてきたから、「両国間には信頼感が欠けている」と、レザーは語る。
実際、南北首脳会談に対する市場の反応はごく控えめだったと、レザーは指摘する。それに「一般に、朝鮮半島情勢は市場心理を動かす大きな要因にはならない」と、言う。「昨年トランプが、『炎と怒り』という言葉で北朝鮮を脅したときでさえ、金融市場の反応は長続きしなかった」
平和条約の次の段階となる南北統一は、莫大な恩恵とコストの両方をもたらすだろう。「北朝鮮の人口約2500万人は比較的若く、(少子高齢化が進む)韓国の人口動態を改善する。国防費も減るだろう」と、レザーは語る。「だが、統一のコストは莫大だ。韓国と北朝鮮の経済格差は、東西ドイツの比ではない。韓国政府はかつて、統一のコストをGDP100%相当と試算したことがある」
だが北朝鮮にとって、平和条約がもたらす経済的な恩恵は大きい。「北朝鮮の指導部は、中国とベトナムが政治的締め付けを緩めずに経済を自由化して、見事な変革を遂げてきたのを見てきた」と、米資産運用会社マシューズ・アジアのポートフォリオマネジャーであるマイケル・オーは語る。
「若き金正恩(キム・ジョンウン)(朝鮮労働党委員長)が今後30年間を見据えたとき、北朝鮮も中国やベトナムのようになれるはずだと思ったとしても、不思議はない」
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