最新記事

中東

トランプ政権の核合意離脱が引き起こすイラン内部の権力闘争

2018年5月12日(土)18時53分

5月8日、米国がイラン核合意から離脱したことを受け、イランの核やミサイル、地域での行動に関するより広範な合意を今後の協議で締結できる可能性は、良く見積もっても極めて低くなったとの見方が、外交関係者の間で出ている。写真は2012年2月、テヘランで撮影(2018年 ロイター/Morteza Nikoubazl)

米国がイラン核合意から離脱したことを受け、イランの核やミサイル、地域での行動に関するより広範な合意を今後の協議で締結できる可能性は、良く見積もっても極めて低くなったとの見方が、外交関係者の間で出ている。

トランプ米大統領は8日、イランが経済制裁の緩和と引き換えに核開発の制限に同意した2015年の核合意から離脱すると表明。イランと新たな合意に向けて協議する「準備と意思と能力がある」と述べた。だがイラン側は、再協議の可能性を否定し、報復に出ると脅している。

トランプ氏の決断は、前任のオバマ大統領の最大の外交成果を帳消しにし、イランとの対立悪化や、合意にとどまるようトランプ氏を説得してきた英仏独などの最重要同盟国との関係に水を差すことにつながるものだ。

マクロン仏大統領は、最近の訪米でトランプ氏の合意離脱の意思を感じ取ったとみられ、4月24日の時点でイランとの「新たな合意」に取り組む考えに言及していた。

マクロン氏は、新合意について、イランの核開発を短期と長期で制限し、弾道ミサイル開発を抑制、さらにシリアや、イエメン、イラク、レバノンでの西側から見て「安定を損なう」行動を減らすことを柱とすべきだと述べた。

仏政府関係者によると、トランプ氏が核合意から離脱した場合に、外交の余地を生かし続けることがマクロン氏の提案の狙いだった。

だが、現職も含めた外交関係者は、このような「グランドバーゲン(大型合意)」の交渉のテーブルにイランを再び着かせることは極めて難しくなると話す。イラン側から見れば米政府による「合意のほご」としか受け取れない行為の後だけに、なおさらだ。

「今後何年もの間、イラン側は新しい合意に関するあらゆる交渉に抵抗するだろう」と、かつて拡散防止問題担当の米国務省高官だったロバート・アインホーン氏は指摘。ロウハニ大統領にとって、新たな交渉に乗り出すことは「政治的に不安定」なものになると付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NATO事務総長、国防費のGDP比2%目標引き上げ

ワールド

イスラエル、ヨルダン川西岸空爆 ハマス戦闘員2人死

ワールド

トランプ氏、軍の多様性政策撤廃へ近く大統領令=国防

ワールド

トランプ政権との直接接触、まだ始まらず─ロシア外務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 2
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 3
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 4
    オーストラリアの砂浜に「謎の球体」が大量に流れ着…
  • 5
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 6
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 7
    「1日101人とただで行為」動画で大騒動の女性、アメ…
  • 8
    不動産危機・中国の次のリスクはZ世代の節約志向...…
  • 9
    関税合戦が始まった...移民送還を拒否したコロンビア…
  • 10
    ネコも食べない食害魚は「おいしく」人間が食べる...…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 9
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 10
    電気ショックの餌食に...作戦拒否のロシア兵をテーザ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中