米朝首脳会談を控えた金正恩からのプレゼント? 拘束米国人解放の光と影
ひたすら待つだけの高麗ホテル
平壌空港に到着した一行は、中心部にある高麗ホテルに移動した。ポンペオら政府関係者は38階に案内されて北朝鮮側と交渉に入ったが、モレノ記者らはロビーでそれから10時間ひたすら待つことになった。携帯電話はもちろんネットもつながらないため、警備員に同行してもらいホテルの周辺を見物するなどして時間を潰すしかない。
ホテルに戻ると国務省の高官が何度かやってきて交渉の様子を伝えてくれた。夕方4時からポンペオと金正恩が会談することも教えてくれたが、同行はできないという。結局取材らしいことは何一つできないまま、ホテルのロビーでぼうっとするだけで1日が暮れようとしていたときにポンペオが戻ってきた。何かいい知らせがないかと顔を見ると、ただ笑いながら指で十字を作って幸運を祈って見せたという。
ところがその15分後、国務省の高官が突然の知らせをもってきた。拘束米国人3人が解放されるという。北朝鮮当局者数人がホテルにポンペオを訪ねてきて「非常に難しい判断だが、3人の米国人拘束者について"赦免する"ことを許す」と話したという。釈放されるのは7時ということで医師たちは他のホテルに移動し、他の者は空港へ移動することになった。
だが、2人の記者は平壌で解放の瞬間を取材することはできなかった。空港で解放された3人を待ち構えていたが、「何も話しかけてはいけない」「彼らをそばで見ることも禁止」と言われたからだ。「解放される3人のプライバシーが侵害されないため」とポンペオが言ったのが理由とされるが、何か北朝鮮側を刺激するような発言が飛び出して、最後のところですべてが御破算になることを恐れたのかもしれない。
解放された3人は機内に乗り込んでからも記者たちからは2つのカーテンを挟んだ離れた座席にいて、取材どころか近づくこともできないようにされていた。専用機は日本の横田基地とアラスカの基地で給油をしたが、横田に着いたところで開放された3人は別の専用機に乗り換えてしまった。
結局アンドリュース空軍基地には解放された3人の乗った専用機が先に到着した。皮肉にも北朝鮮に同行したモレノ記者は、トランプが3人を歓迎する姿と、それを取材する各国メディアの様子を200メートルほど離れたところから見守ることとなった。