米朝首脳会談を控えた金正恩からのプレゼント? 拘束米国人解放の光と影
北朝鮮から無事に解放された人びとには笑顔が戻ったが── Jim Bourg-REUTERS
<ポンペオ国務長官を再び平壌に送り、拘束された韓国系米国人3人を解放させて満面の笑みで迎えたトランプ。だが本当の解放はまだこれからだ>
10日午前2時過ぎ(日本時間同日午後)、ワシントン郊外のアンドリュース空軍基地にトランプ大統領とメラニア夫人が登場した。北朝鮮に拘束されこの日解放された韓国系米国人3人を出迎えるためだ。大統領夫妻のほか、ペンス副大統領夫妻、ケリー大統領首席補佐官、ボルトン大統領補佐官など、トランプ政権の主要メンバーが勢揃いした。
北朝鮮から帰ってきた3人が乗っている国務省の専用機は着陸すると巨大な星条旗を掲げた前にピッタリと止まり、それを誇らしく見上げるトランプ。感動的に映し出されるように、報道陣のカメラアングルまで計算されたショーが始まった。
韓国メディアNEWSISなどによると、詰めかけた各国メディアは200人あまりにのぼり、日本のTBSの記者は「ワシントン支局から8人分の取材申請をしたら全員許可された」と苦笑していたという。
だが、この今回のポンペオ国務長官の訪朝は、米国人の解放が成功するかどうか分からない状況の中で行われたものだった。
WP記者が同行した平壌への旅
ワシントンポストで国務省担当のキャロル・モレノ記者は今回の北朝鮮からの米国人解放交渉について同行取材を許された。その報告記事によると、4日午後に国務省の担当者から、北朝鮮取材について電話がかかってきた。ただ1度だけ北朝鮮に行くことを許可する特別許可の承認印がついた1ページだけのパスポートを発行してくれるという。もちろん北朝鮮に行くことは誰にも口外しないようにという箝口令が出された。
3日後、モレノ記者は北朝鮮に向かう専用機に乗り込んだ。わずか4時間前に北朝鮮に行くとの連絡が来たのだ。報道関係者は彼女とAP通信の記者の2名だった。機内には国務省、ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーも搭乗している。彼らから今回のポンペオの任務は、米朝首脳会談のための打合せだと明かされた。
ただ、それだけでないことは搭乗者の顔ぶれを見ると分かったという。政府関係者のほかに、内科と精神科の医師、また新しいパスポートを発給できる領事サービスを担当する国務次官もいたからだ。そこで、モレノ記者は拘束されている米国人の解放交渉についてポンペオに聞いてみた。ポンペオの答えは曖昧だった。
「北朝鮮が首脳会談前に彼らを解放すれば立派なジェスチャーになるだろう。再び彼らが正しい行動をするように要請する」
3人の米国人解放についての確たる保証を手にしているとは思えない言葉だった。